2. 国際金融資本の支配力低下の可能性
2つ目は、ニューヨークやロンドンに拠点を持つ国際金融資本の支配力、統制力が低下している可能性です。
ロックフェラー・グループの総帥、デイビッド・ロックフェラー氏は、昨年100歳となり、最近は車いすで移動する姿が報じられています。金融グループの中で、NY系とLDN系の間の勢力図が変化している可能性もあります。
気になるのは、米大統領選で、国際金融資本などが想定した共和党の候補ルビオ氏が早々に撤退を余儀なくされたことです。彼らが推すクリントン氏で行けるとの読みがあるかもしれませんが、共和党に関しては、大きな読み違いがあり、それを力ずくで修正することもできなかったことになります。
政治戦略的にみると、利上げを遅らせれば遅らせるほど、大統領選挙の荒波の中で難しい選択を余儀なくされ、困難になります。
選挙を考えれば、利上げのチャンスはなるべく早い時期と選挙後の12月の2回ということになりますが、これも金融市場が動揺すれば保証の限りではなくなります。
今回の利上げ戦略をみるにつけ、従来の国際金融資本のやり方と比べると、必ずしもスマートでなく、歯切れの悪いものを感じます。
彼らが力を保持しているなら、シェール企業の借り換え後に済々と利上げを行うでしょう。しかし、大統領選の運び方をみても、国際金融資本や欧州支配層の力が低下している可能性もうかがえます。
想定外の「トランプ大統領」も視野
さてどちらの要因が大きいのか。FOMC参加メンバーによる金利見通しを見ると、今年の利上げペースこそ2回、0.5%に下げましたが、来年以降は年4回、1%の形は変わっていません。
これを見ると、とりあえず、目先のジャンク債のデフォルトを回避し、借り換えを済ませてから利上げ、とのミニ修正の可能性が高いと見ます。
しかしもし、金融資本や欧州支配層の力が低下しているなら、逆に昨今の中東のように、秩序のない市場の動きや、ポピュリズムに流された政治選択をするリスクが高まることになります。
市場では米国の利上げを見込んでドルを買った人の巻き戻しが懸念され、選挙では想定外の「トランプ大統領」への準備が必要になるかもしれません。
『マンさんの経済あらかると』(2016年3月18日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。