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消費増税で中小企業の倒産加速。これが安倍政権の言う「企業の新陳代謝」なのか?=原彰宏

小規模企業で倒産が目立つ

11月では、
人手不足倒産は14件(前年同月比75.0%増)発生。3カ月ぶりの前年同月比増加
後継者難倒産は48件(前年同月比2.0%減)発生。3カ月ぶりの前年同月比減少
返済猶予後倒産は35件(前年同月比10.3%減)発生。3カ月ぶりの前年同月比減少
とあります。

従業員の離職や採用難等で収益悪化を招いたことなどから経営難に陥った人手不足倒産は、2019年1~11月累計で164件(前年同期比23.3%増、負債総額274億400万円)発生し、調査開始(2013年)以降で年間最多だった2018年(153件)を11月時点で上回ったとのことです。

老人福祉事業や美容業、ソフトウェア開発などのサービス業(46件)のほか、建設業(45件)や道路貨物運送業(27件)といった業種が上位を占め、介護スタッフや美容師、ネイリスト、IT技術者、建築職人、トラックドライバーなど、専門職の確保や定着に窮した小規模企業で倒産が目立ったと分析されています。

負債総額は1,307億9,700万円と、負債100億円超の倒産が2件発生したことから、6カ月ぶりに前年同月を上回りました。

書店「ザ・リブレット」などを名古屋市内中心に20店舗以上展開していた大和書店株式会社(負債約30億円、愛知県、破産)のほか、食品スーパー3店舗を構えていた株式会社あいでん(負債約6億7,200万円、新潟県、破産)や、ピーク時に呉服店「きもの日本橋かのこ」を約30店舗出店していた株式会社かのこ(負債約4億1,600万円、東京都、破産)など、店舗出店時の借入過多や販売不振が影響した小売企業で、負債数億から数十億円規模の倒産が相次いだことも負債総額全体を押し上げた一因となりました。

来年4月から中小企業も「働き方改革」へ

今年4月より大企業でスタートした働き方改革関連法の施行が、1年間の猶予期間を経て来年4月から中小企業にも適用されます。

人手不足感の強い建設業や運送業では、時間外労働の上限規制について5年間の猶予が設けられているものの、労働条件や職場環境の改善が進む企業との格差が一層広がる可能性が高く、好条件での従業員確保が困難な小規模企業を中心に、人材流出などによるさらなる人手不足倒産の増加も懸念されるようです。

直近10月の商業動態統計速報(経済産業省)によると、小売販売額(11兆900億円)は消費税率引き上げや台風19号の影響で前年同月比7.1%減と3カ月ぶりのマイナスとなり、前回消費税率引き上げ時(2014年4月)の減少幅(4.3%減)を上回りました。

11月のTDB景気動向調査においても、「小売」の景況感は判断の分かれ目となる50を大きく下回る36.1と、2カ月連続で10業界中の最低値を記録しており、引き続き注視を要するとあります。

倒産件数全体での2019年1~11月の累計件数は7,646件(前年同期7,436件)と前年同期を2.8%上回り、このうち、飲食店(668件、前年同期比10.6%増)では11月単月で3カ月ぶりに前年同月を下回ったものの、年ベースでは最多を更新する勢いで倒産が発生しています。

また、大手ディスカウントストアやドラッグストアチェーンとの競合が激しい食品スーパー飲食料品小売店でも、来店客数の減少や各種コスト負担増加による収益悪化などから、前年をすでに上回る件数水準で推移しており、家計の節約志向の高まりによるマイナスの影響が一段と懸念されるようです。

Next: 企業を追い込む「節約志向」。庶民は増税と景気不安で買い控えへ

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