2020年の上海総合指数の見通し
(1)中立シナリオ(50%)
安値の時期:1月
安値:2,800~2,900ポイント
高値の時期:11月
高値:3,200ポイント
<理由>
・現在のバリュエーションは相対的に割安である
12月6日現在の上海市場における市場平均PERは13.9倍に過ぎない。過去20年間のデータと比較すると、10倍割れは2014年5、6月だけ。現在の水準は、2012年後半から2014年秋あたり、2018年秋から2019年初めにかけての期間に次ぐ低さである。PERが低いからと言って、すぐに上昇するといったわけではないが、業績見通しが崩れる感じがしない中で、株価の下値は堅いとは言えそうだ。
・5Gの立ち上がりで関連の設備投資が出る
中国では11月1日から5Gサービスが開始された。最初は、一線都市、新一線都市、二線都市など規模の大きな50都市に限定してサービスが開始されるが、2020年には営業範囲は340以上の都市に広げられる。その時点で、中国の5Gネットワークは世界最大となるだろう。
・スマホ、自動車が今年悪かった反動で生産台数が伸びる
Gartnerによれば2019年7-9月期の世界スマホ販売台数は3億8,700万台で0.4%減だが、華為技術は6,582万台でサムスン電子に次いで第2位、26%増と急増するなど、中国勢は全体で見れば、好調である。今後、5Gスマホの新製品が需要を喚起するとみられる。また、国家統計局による10月の自動車販売台数は▲2.1%減であったが、累計の▲11.1%減と比べれば、減少率が小幅となってきた。7月から排ガス規制の強化に繋がる国六排出基準が実施されたこと、7月から制度変更による新エネルギー自動車に対する補助金が削減されたことなどの悪影響が薄らぐと予想している。
・足元の景気減速への対応策として、インフラ投資の拡大、不動産価格抑制策のフェイドアウト、金融緩和などが期待される
政府は景気減速を無視できず、2020年は2019年以上に景気に配慮した政策が打ち出されると予想する。
・米中貿易戦争が一旦、小休止となる
トランプ大統領が仕掛けた米中貿易戦争は、トランプ大統領の都合によって小休止となる。11月の大統領選挙でトランプ氏は再選されるだろう。選挙が終わるまではアメリカ経済、株価への影響に配慮して、米中協議において部分合意を結び一旦、追加関税措置の一部を撤廃すると予想する
・資本市場の自由化、国際化が進展する
米中貿易戦争は、中国に対して対外開放への圧力を強める。共産党は2020年、証券会社、先物会社、資産運用会社などに対する外国金融機関への資本規制を無くす方針である。また、中国証券市場が引き続き国際化を進めることで、海外の株価指数算出会社を含め、金融機関はA株への投資を構造的に拡大させる
<高値、安値の時期>
既に、5G投資が立ち上がり、スマホ、自動車の販売台数が底入れしている。米中部分合意は遅くても2020年1月中に行われる。株価は右肩上がりと予想する。ただし、トランプ氏の再選が決まれば、対中政策は再び強化されることから、11月中にピークを打つと予想する。
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