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働き方改革が新型コロナで裏目に? ワーキングプアが失業者へ落ちる=斎藤満

コスト高となった非正規雇用

そんな転機となるときに、非正規雇用の処遇改善がぶつかり、この4月から非正規雇用の労働コストが高まりました。

同一労働・同一賃金の考えのもと、非正規雇用にも各種手当の支給が義務付けられ、正規雇用との賃金格差是正が求められました。それでなくとも、雇用調整をしやすい労働力、つまり雇用の調整弁として利用してきた非正規雇用のコストが高まれば、それだけ調整圧力が高まります。

実際、コロナウイルスが広がる前の段階から、新年度からのコスト高を見込んで、派遣社員の契約を打ち切るところが少なくなかったようです。

使用者側からすれば、コスト高になる非正規雇用を利用する意味がなくなるからです。

そして3月下旬になって、東京などの感染拡大が加速し、「感染爆発」が懸念されるに至って、事態は一層深刻になりました。

大手アパレル会社は4月入社予定の学生に対して、急遽内定取り消しを通知しました。

突然内定を取り消されて、すぐに別の仕事が見つかる保証はありません。正社員の首を切りにくいだけに、業務縮小が見込まれる場合、新卒採用を減らすか、非正規雇用の調整で乗り切るしかありません。

そこへ非正規の処遇改善、コスト高となれば、これまで以上に彼らの首切りが多くなります。

その場合、感染拡大の影響がどれくらい続くのか、そして企業の体力によって、雇用調整の圧力は変わってきます。

まもなく始まる倒産・失業ラッシュ

財務省の「法人企業統計」によれば、資本金1千万円以上の企業は非金融部門だけでも「内部留保」が470兆円余りあり、ある程度の間は乗り切る体力はありそうです。

しかし、利益準備金の蓄積が乏しい中小企業になると、2〜3週間ならともかく、1か月、2か月と長引くほど、ピンチになります。

倒産を避けようとすれば、最大のコストに当たる人件費を削るしかなく、その際、変動費として採用している非正規雇用が真っ先に切られます。その潜在的な「失職可能性者」は2,000万人以上います。このうち、パートが1,000万人強、バイトが500万人弱となっています。

政府は近いうちに緊急事態宣言を行い、東京か首都圏などのロック・ダウン(都市閉鎖)に出る可能性があります。その場合、週末のみならず、平日も休業を余儀なくされる企業が出てくるはずです。

すでに自粛によって客を失っているところへ、政府の要請でさらに2〜3週間、あるいはそれ以上の間、移動制限がなされれば、コストを吸収できずに、解雇、倒産に追い込まれる企業が増えると見られます。

米国では約8割の人が非常事態宣言のもと、「移動制限」「外出制限」を余儀なくされ、営業停止となる企業が急増しました。これを受けて、3月14日から21日の1週間で、一気に300万人以上の人が新たに失業保険申請を行い、4月分の雇用統計以降、失業率が爆発的に上昇すると見られます。

日本でもこれから同様の事態が起こる可能性があります。

Next: 新型コロナウイルスの感染拡大と非正規の処遇改善が重なってしまったこと――

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