なぜ企業は内部留保金をここで投入しない?
足もとで膨大なリスクを冒してもせっせと会社に通い、そもそも自宅待機にもしない会社というのはどういう規模でどんな業態なのか、詳細が知りたくなります。
日本のサラリーマンのうちIT機器を使いこなしながらテレワークで成果を出せるいわゆるインフォメーションワーカーは、せいぜい全体の15%程度と言われていますから、対面のビジネスが必要になる業態の企業の場合には、どうしても出社せざるを得ない状況にあることは理解できます。
また休業にしても国からその補償が得られるわけではないため、無暗に休みにすることができない企業が多いこともよくわかります。
しかし、460兆円という莫大な内部留保を抱える企業であれば、特に大手・準大手を中心にしてどのような業態にしても、ここから1か月もしくは2か月(日数にして土日の休みを除けば40日から50日)程度、業務を完全休業にして最小限の人数で回して行くことを考えられるところは相当数あるはずです。
それでも資金的に耐えられないそれ以下の企業規模のところへの支援を集中すれば、法律的に都市封鎖や電車の運行停止などという状況を作り出さなくても、十分にウイルスの感染拡大を阻止する行動を実現することができるのではないかと思うのですが、これは単純に私だけが抱く幻想なのでしょうか?
中途半端な行動制限の実施がなんの成果もあげられないというのが、まさに現状に見えて仕方ありません。
確かにここから先、この新型コロナのウイルス騒動がどうなるのかの全容が見えていないタイミングで、せっかくの内部留保金を思い切り吐き出すことに躊躇する経営者が多いことはわかります。
しかし企業内で大量感染者を抱えてしまった場合、その後の企業経営にはもっと大きな影響が出ることも事実ですから、このあたりの損得勘定はより精査して判断すべき時ではないかと思います。
株価よりも実体経済は危機的状況
また、そもそもこの内部留保は円安や株高、減税という政府による政策でもたらされたある種の不労所得的な意味合いも大きいわけですから、現状のような危機的な状況にこそ有効利用すべきもののはず。
なのですが、そうした気配がまったく感じられないのは非常に残念と言わざるをえません。
足もとの状況を見るにつけ、日本企業の経営者には本当に危機感があるのかあるいは現状認識を正確に行えているのか、疑問は募るばかりの状況です。
米株を差し置いて妙に上昇する日経平均の推移なども、経営者から危機感を奪う要素になっているのかもしれません。
しかし、相場を通して見る日本の状況よりも、リアルな社会・経済状況ははるかに悪化しているのは間違いなく、このままの状況を延々と続けることに非常に危機感を覚える時間帯です。
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『今市太郎の戦略的FX投資』(2020年4月15日号)より抜粋
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