直近で最も注目されているテーマの1つであるペロブスカイト太陽電池について、その高い期待の背景、技術的な特長、克服すべき課題、そして関連銘柄を現実的な観点からくわしく解説します。ペロブスカイト太陽電池については、高市氏が総裁選の時に強く推進していたこと、また直近で発表された内閣府の成長戦略のエネルギー項目でも推進が盛り込まれていることから、当社(つばめ投資顧問)にも問い合わせが多く寄せられています。このテーマを深く掘り下げ、今後の日本経済を支えうるビジネスに発展するのか、関連銘柄が飛躍できるのかどうかを見ていきましょう。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』元村浩之)
プロフィール:元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問アナリスト。1982年、長崎県生まれ。県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
ペロブスカイト太陽電池への期待が高まる背景
ペロブスカイト太陽電池は、日本が発明した技術として、政策面からも強く後押しされています。
<政策による強力な推進>
高市氏は、シリコンの太陽パネルを美しい山を切り開いて並べるのではなく、「日本が発明したペロブスカイト太陽電池をまず活用すべき」「技術で勝ってビジネスで負ける、そんなもったいないことを繰り返さない」と発言し、その重要性を強調しています。
さらに、先日発表された内閣府の成長戦略では、「資源エネルギー安全保障GX」の項目において、ペロブスカイト太陽電池の研究開発や国内外への本格的な展開を促進することが明記されており、政策ベースでの強い推進が期待されます。
<市場の急拡大予測>
富士経済によると、ペロブスカイト太陽電池の世界市場は、2030年、2035年、2040年となるにつれて、急拡大していくと予測されています。

出典:富士経済
<設置自由度と発電量のポテンシャル>
この新しい太陽電池は、設置可能な場所が格段に広がるという大きな特長を持っています。将来的には、既存の太陽電池の2023年時点の発電量の約25倍を発電できる可能性があると試算しているコンサル会社もあります。
日本政府も、太陽光発電によるエネルギー構成比を、足元の約10%から2030年には14~16%、2040年には23~29%程度まで高める目標を公表しており、ペロブスカイト太陽電池の活用が視野に入っていると考えられます。
ペロブスカイト太陽電池の革新的な特長
ペロブスカイト太陽電池の最大の魅力は、その物理的特性と製造方法にあります。
<薄くて軽くて曲げられるフレキシブル性>
ペロブスカイト太陽電池は、薄くて軽いのが特徴で、物によっては曲げることも可能です。山を切り開いて設置されるシリコン製の既存の太陽電池と比較すると、この特性により設置場所の自由度が飛躍的に高まります。
具体的には、ビルの壁面、ガラス窓(素材を混ぜ込んで窓自体を太陽電池化)、さらには電柱のような曲面にも貼り付けることが可能になります。
<日本の技術が活きる製造工程>
ペロブスカイト太陽電池は、非常に小さな結晶(ペロブスカイト)薄く塗り広げて発電できる膜にする構造です。この膜の厚さは髪の毛よりもずっと薄く、1μm(マイクロメートル)以下であり、プラスチックシートで挟んでフィルムのような太陽電池にできます。
この「塗る技術」は、日本が得意とする印刷技術に基づくものであり、元々日本が研究開発して生み出した技術であるため、今後の日本産業を支えるものとして期待されています。
<原料調達の強固なサプライチェーン>
既存のシリコン系太陽光パネルは、原材料(シリコン)の多くを中国に依存しています。一方、ペロブスカイト太陽電池は主にヨウ素から作られ、そのヨウ素の生産国シェアは、チリが65%ですが、日本が世界第2位の26%を占めています。
このため、ペロブスカイト太陽電池は、原材料の確保という側面から、強固なサプライチェーンを構築できるという期待もされています。