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英国EU離脱がバリュー株投資家にとって千載一遇のチャンスとなる理由=栫井駿介

イギリスの国民投票でEU離脱が過半数を占め、世界の金融市場に混乱をもたらしています。バリュー株投資家はどのような行動をとるべきでしょうか。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

予想外の事態に対して、バリュー株投資家はどう対処すべきか

最悪の事態を想定する

何かよくわからない事象が起きた時、バリュー株投資家が行うべきことは、考えうる最悪の事態を想定することです。それを(1)起きる確度(2)世界経済への影響度に分解して考えます。

想定される最悪の事態は、他のEU加盟国も連鎖的に離脱を決定することです。そうなると、EUは統制を失い、欧州は一時的な混乱に陥るでしょう。

最悪の事態が起きる確度、つまり連鎖的にEU各国が離脱する確率ですが、これは決して高くないと考えています

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イギリスは、ユーロも採用せずにポンドを維持するなど、EUから一歩退いた立場でしたから、離脱となる土壌もありました。地理的に見ても唯一大陸から離れています。

南欧や東欧諸国は、やっとの事でEUに加盟した国もあるくらいですから、離脱という動きになる可能性は高くありません。可能性があるとしたら、独立してもやっていける可能性のある経済的に豊かな北欧などに限られます。

その中でも最悪は、フランスが抜けてEUが事実上崩壊することです。しかし、それでも多少のやりづらさは出てくるでしょうが、各国が貿易をやめるわけではありません。一時的な混乱を経て、落ち着くべきところへ落ち着くでしょう。

経済的に考えると、ヨーロッパが抱える最大の問題は低成長とデフレです。これはバブル崩壊後の日本経済と酷似しています。ヨーロッパは「日本化」を避けるため、EUという巨大経済圏を作り、移民を積極的に受け入れてきたわけですが、その流れが停滞することにはなります。

一方、世界経済の成長をけん引しているのはいまや中国やインドを始めとする新興国と、世界最大のGDPを誇るアメリカです。ヨーロッパの成長が一時的に停滞したとしても、長期的な観点では世界経済への影響は甚大とまでは言えないのです。

世界経済におけるイギリスの立ち位置

では、決定事項としてイギリスのEU離脱の影響はどうでしょうか。

イギリスは世界第5位の経済大国です。とはいえ、世界のGDPに占める割合は約3%に過ぎません。現在言われているようにGDPが5%縮小したとしても、世界経済に直接的に与える影響は0.15%に過ぎないのです。

それよりも、世界のGDPの12%を占める中国の経済成長の方がより重要なのは明らかです。

また、EUから離脱すると言っても、鎖国するわけでもありません。むしろ貿易は拡大させたい方向性であり、イギリスが世界経済からすっぽり抜けるということはあり得ないのです。

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