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不正会計疑惑で株急落、伊藤忠商事が抱える「本当のリスク」=栫井駿介

アメリカの調査会社グラウカス・リサーチ・グループが、伊藤忠商事<8001>の会計不正を指摘するレポートを公表し、同社の株価が下落しています。レポートでは、伊藤忠に東芝と同じような事態が起きていると指摘していますが、本当のところはどうなのでしょうか。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

黒船襲来。伊藤忠が指摘された「会計不正」はどこまで本当か?

カラ売りファンド「グラウカス」のしたたかな戦略

グラウカスは調査会社であると同時に、ファンドの運用を行っています。その手口は非常にしたたかです。

まず、会計不正が行われている可能性のある企業を見つけ、その株を空売りします。そして、売りを推奨するレポートを書き、株価が下がったところで株を買い戻して利益を出すという手口です。

一歩間違えば、風説の流布ともとらえられかねない方法です。しかし、グラウカスはあくまで有価証券報告書等の開示資料から問題点を指摘しているだけで、虚偽ではないとしています。きれいな言い方をすれば、「会計の番人」です。

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法律上問題ないからといって、倫理的な問題が残ります。そもそも会計というのは完全なものではなく、解釈のちがいは必ず起こるものです。私としては、グラウカスのやり方には全く賛同できません。

これまでアメリカや香港、インドなどを中心に活動してきましたが、ついに日本にも上陸しました。そして最初に目をつけられたのが伊藤忠というわけです。

実態は会計不正と言うほどのものではない

今回の指摘は3つです。1つ目はコロンビアの石炭事業への出資、2つ目は中国CITICへの投資、3つ目は中国企業の頂新の持分に関するものです。いずれも利益のかさ上げに利用したとしています。(グラウカスのレポートはこちら

伊藤忠は、すぐさまレポートを否定するリリースを出しています。監査法人による監査も受けており、問題ないという立場です。私も見ましたが、会計不正と言われるほどのものではないと思います。

伊藤忠商事 <8001> 日足(SBI証券提供)

伊藤忠商事 <8001> 日足(SBI証券提供)

しかし、市場は敏感に反応しました。レポートが公表されてから、一時年初来安値を更新しました。それに伴い、PERは5.3倍、配当利回りは4.7%に達しています。バリュー投資家なら、つい手を出したくなる数字です。

Next: 業績堅調でも割安な伊藤忠の株価は、一体どんなリスクを反映しているのか?

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