歪んだ社会、日本の現実
第2の理由は、大きな金融政策として、政府の借金(国債など)を日銀の通貨発行権を使って解消するということに躊躇したからでしょう。政府(日銀…政府と日銀は親会社と子会社の関係)は通貨発行権を持っていますから、たとえば1000兆円の国債を返すのに長期的に同額の通貨を発行して国債の分を元に戻すことができますが、これには日本の経済の状態や外国との関係で円の信頼性が傷つく可能性があり、なかなか踏み切れませんでした。
特に、現在の黒田日銀総裁になるまでは、日銀は通貨量を制限することでインフレを避け、正常な経済発展を可能にすることができるとしていました。しかし現在の状態を見ると、日本がまだ発展途上で国民が「よりよい生活をしたい」と必死に働くような環境ならば有効ですが、すでに成熟した日本社会では、民間の発展の力が弱ったときや、物に対する欲求が低くなって設備投資が少なくなったときには有効ではなかったのです。
国民の努力によって社会的な価値の蓄積は増えているのに通貨は増えないのですから、歪んだ社会になります。それが高度成長の時の日本とまったく違い、社長と臨時社員の給料の差がものすごく開いたり、失業率が低くても賃金が上がらないなどの「奇妙な現象」となって表れたのです。
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※太字はMONEY VOICE編集部による
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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。また、皆様のご質問にもお答えしますので、気軽にお尋ねください。