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誰が日本のパチンコを殺すのか?出玉規制とカジノ解禁のカラクリを読む=栫井駿介

パチンコはギャンブルではない!?

パチンコのギャンブル依存症対策を難しくしているのが、「三店方式」と呼ばれる仕組みの存在です。

そもそも日本では、競馬や競輪などの「公営ギャンブル」以外の賭博行為は禁じられています。バドミントンの桃田選手が通っていた「闇カジノ」が摘発されたように、表向きは合法の「民営ギャンブル」は存在しないのです。

パチンコ店はあくまで「遊技場」であり、ギャンブルではありません。遊んだ「景品」として出玉と交換で純金の入ったカードのようなものがもらえます。それを「交換所」で売却することで、現金を得られるのです。

パチンコ店と交換所が直接関係ないとされることから、現金を渡しているわけではないと解釈されています。その結果、パチンコは法律上「ギャンブルではない」とされているのです。

パチンコがギャンブルでない以上、政府は表立ってギャンブル依存症対策をすることはありません。それなのに、カジノができるからギャンブル依存症対策でパチンコの出玉規制強化を行うというのは、これもまたチンプンカンプンです。カジノはパチンコ業界のパンドラの箱を開けているようにしか思えません。

パチンコ業界がこのグレーな土壌の上に成り立っているため、「パチンコホール」を営む会社は日本の証券取引所の上場認可が下りません。国内に上場しているパチンコ関連銘柄は「遊技機メーカー」であり、表向きギャンブルとは無関係とされています。

ちなみに、日本のパチンコホール運営会社のダイナムホールディングス(ダイナム)は香港市場に上場しています。融通の利かない日本の取引所を避けた結果です。

公表されているダイナムの財務諸表を見ると、「貸玉収入」が8,100億円、「景品出庫」が6,600億円となっています。すなわち、ここから逆算すると、パチンコは平均してマイナス20%から始まることがわかります。「パチプロ」と呼ばれるような人はそれでも勝つのですが、一般人にはつくづく割に合わないギャンブルだと思います。

衰退するパチンコ産業に現れた「カジノ」という光

ギャンブルとして割に合わないばかりか、パチンコホールには煙草の煙が充満し、騒音を撒き散らしています。お世辞にも雰囲気のいい場所とは言えません。そのせいで、特に若者を中心にパチンコ離れが進んでいます

パチンコ市場のピークは1995年でした。その時の市場規模は30兆円、遊技人口は2,900万人、パチンコ店は18,000店ありました。それが現在では市場規模23兆円、遊技人口1,000万人、パチンコ店は10,000店となっています。この流れは今も止まる様子はありません。

ここからわかるように、パチンコは明らかな衰退産業です。これは、セガサミーなどの「遊技機メーカー」にとっても例外ではありません。ギャンブル依存症対策による出玉規制強化よりも、関連銘柄にとっては市場の縮小こそが存亡を左右する重大事と言えるのです。

もちろん、各社は市場の縮小をただ眺めているわけではなく、パチンコ以外への多角化を目指しています。セガサミーも、もともとは遊技機メーカーのサミーがゲームメーカーのセガを買収したことで誕生しています。

そこへ出てきたのが、日本でのカジノ建設の話題です。日本で「ギャンブル」を取り扱える民間企業と言えばパチンコ企業ですから、強みを活かした多角化戦略としてもってこいのテーマだったのです。これにより「合法的な」ギャンブルを大手を振って経営することができます。

パチンコホール大手のマルハンやセガサミー、ユニバーサルエンターテインメントは、日本での展開に先駆けて韓国やフィリピンでカジノを運営しています。ここで実績を積んで、事業者の選定をより有利に進めようという算段です。

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