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現役投資家・大阪のNさんとの交信~最近の市況について

投資歴54年の山崎和邦氏が思い出の投機家を振り返る本連載、今回は特別編として、好評配信中の有料メルマガ『投機の流儀』より、いまも頻繁に交信のある投資家「大阪のNさん」と山崎氏のリアルタイムなやりとりをお届けします。

山崎和邦 週報『投機の流儀』vol.150 2015/4/19号より、マネーボイス編集部にて再構成

2015年4月オプションSQ / 地銀株の上げについて

現役投資家・大阪のNさん(以下「大阪N」):

さて先週末のSQの日(※1)を境に相場が一変してしまいましたね。

3月、4月と散々買い方に蹴散らされた日経平均先物の売り方が、買い方の反撃が来ないのを確かめながら売ってる感じです。

山崎和邦(以下「山崎」):

「ノックアウト」という市場ゲームを御存知でしょう。一瞬でも2万円がつけば利益が出る賭け、2万円に行かない方へ賭けた側からおカネが取れる仕掛けです。

10日のSQで示現した20,008円47銭という数値は、それに関連して、ファストリ、KDDI、ソフトバンンク(※2)を操作するだけで日経平均2~300円は上げられるファンド勢のシワザではないでしょうか?

ありもしない価格「20,008円47銭」いわゆる「幻のSQ」(※3)の作出をみて、あまり市場を淫するのは辞めてもらいたいと思いました。2万円達成による各メディアのバカ騒ぎ――テレビでは放送コード上「狂想曲」と岡崎さんに訂正されましたが――もしかりです。

大阪N:

先週まで相場の上昇を演出して来た銘柄、特に薬品、食品は既に大幅下落。週末には小売も崩れ始めました。今はどれくらいの深さの押しになるのか探りながら進めています。

ただし、地銀株の上げには驚かされます。銀行でありながらPBR1割れの銘柄が続出していたので、いつか来ると思っていましたが「何で今?」と私には理由がわからないので、ファンドの論理を良くご存知の岡崎良介氏に聞いてみたいところです。

2月初旬から上げ始めたメガバンク、リース会社の買いと連動していると想像されます。

山崎:

私は幼友達が長野県の八十二銀行の役員だったし、野村証券の高崎支店勤務時代に群銀は債権の重要顧客でしたから群銀にも関心があって地方銀行が格安だとは思っていたが、自分で買うほどの熱意はなくタダ見てるだけでした。

震災直後の福島銀行株では本気で行動に移し少々利益を出しました。他言すると市場行動(「勘定の問題」)と被災地への思い(「感情の問題」)を混同して非難する読者が居られると厭だったから、私はウソは書かないが伏せておくことはシバシバあります。

浜田内閣参与「105円発言」/ 昨年10月末の日銀サプライズ緩和について

大阪N:

ところで、浜田内閣参与の「105円発言」(※4)は何だったんでしょう。私は共鳴するところも多かったので「よく言った」と思っていたのですが、その後一部修正のコメントを出していました。

山崎:

彼は正直な人、駆け引きのない人のように見受けます。購買力平価からみて「115円±10円」のアタリが当面は落ち着きやすい、居心地良い場所だと私は思っています。この件については近々中に本稿で書きたいと思っています。

大阪N:

黒田総裁は財務省OBでもあり「消費増税は大きなマイナスの影響を与える」とは言えませんでした。その意味では「かくれ財務省」だと思います。

昨年4月の増税直後から官邸や日銀には景気の指標を含めてありとあらゆる情報が時々刻々入っていたはず。

にもかかわらず、自らの発言によって増税後の落ち込み対策としての追加緩和を実施する論理整合性を失っていた黒田総裁は、増税判断直前の10月末までQQE2を実施できませんでした。

山崎:

何と言っても大蔵省出身者の健全財政宗教は骨の髄までそうだから、しかも知能抜群の努力家の巣窟だから、黒田さんだって根はその筈です。

黒田バズーカ砲2はその本音が出たのではないでしょうか、「俺はやったから安倍さん、今度は貴方の番だよ」と。しかも法学部出身者で固めています。法学というのは本来が保守で旧守ですから、簡単には本心までは変わらないでしょう。

大阪N:

ドル円も日経平均も10月中旬に底を打っていたので市場から見ても意外なタイミングだったと記憶しています。だからこそ効果も抜群だった訳ですが、当時、私は「私も増税に向けてできることはやったよ」というアリバイ証明のような判断だったと指摘しました。

山崎:

まさしくアリバイ証明でありましょう。

大阪N:

結果として11月1か月で10円の円安。当時タイの工場に赴任していた私の友人は採算維持に必死でした。ドル円80円前後の頃に企画されたタイの生産現場が120円でも利益を生み出すためには大変な苦労があったようです。

アベノミクス / ドル円の適正レート / 将来の出口戦略について

大阪N:

一方で、追加緩和、日銀、公的年金の買いもあって日経平均2万円タッチ。加えてベア続出の背景の中で、野党のアベノミクス批判、と言うよりは金銭スキャンダル攻撃をかわして4/9(木)無事予算可決、前半の統一地方選で知事選10戦全勝。

安倍さんは上手に実だけ取りました。

山崎:

彼の政治家としての手腕はお家芸なのか長州のDNAなのか、善悪は別として相当なものでしょう。

先日『安倍官邸の正体』(田崎史郎著 / 講談社)を読んだところでは、その仕組みや運営の方法も巧みであり、ただの強運だけではなさそうです。

大阪N:

私はドル円が120円±20円程度の範囲で変動することが妥当と思っています。ただし、金融業ならまだしも、製造業の現場が急激な為替の変動に追随することは簡単でありません。

一部マスコミがアベノミクスを攻撃する為だけに「円安になっても全然輸出が増えないではないか」と言っていますが、全くあさっての方向を向いた批判です。

山崎:

私は製造業に関しては東芝とトヨタに一部付き合いがあった程度で生きた実感はないのですが、金融・商社に比べて剛構造ですね。

それが「ものづくり日本」の一貫した強みに繋がっている反面、激変する為替相場に対応するのは大変でしょうね。

大阪N:

さらに製造業の方々から見ると「確かに量的緩和が効くことはわかった。では安倍さんが退任した後もその方針を継続してくれるのか?」と不安に思っている人も多い筈。

その意味で、国民がもっと追従しやすい金融政策を透明感をもって企画運営して欲しいと願います。

山崎:

アメリカもそうですが、今の「異次元」の「異常さ」を「正常」に戻せるのか、誰にも答えはないのであって、「今はそれを考える時ではない」という模範解答は、今が「今」であるうちは正解でしょうが、永久に「今」が続くわけもなく、日米ともに先は読めないと言うのが実情でしょう。

だから私は本日、BS12の『マーケット・アナライズ』で「出口戦略なんてない」と言い切ったのですが、日本国民の一人としては、少々投げやりに聞こえたかもしれませんね。

あとで自分の発言を録画で見直して、そのように思いました――

※1 SQ
ここでは日経平均先物・オプションの特別精算指数(Special Quotation)。毎月第2金曜日に日経225構成銘柄の寄り値から算出。3・6・9・12月をメジャーSQ、それ以外をマイナーSQ、オプションSQ、ミニSQなどと呼び、着地点を巡って買い方と売り方の攻防が繰り広げられる

※2 ファストリ、KDDI、ソフトバンンク
日経平均株価の寄与度上位銘柄。他にファナックなど。日経平均株価は225銘柄の単純平均ではなくダウ式平均で算出するため、寄与度上位銘柄の値動きに大きく左右される

※3 幻のSQ
SQ当日の日経平均株価(現物)が、SQ値に一度も届かない現象。寄与度上位銘柄を高く寄らせるなどして強引に「SQ値を作る」ことで、現物と乖離した着地となる。幻のSQ値は目先の上値抵抗・下値支持線として意識される

※4 浜田内閣参与の「105円発言」
2015年4月13日の浜田内閣参与発言「購買力平価からすると120円はかなり円安、105円ぐらいが妥当」により一時円高が進行した


大阪の投資家・Nさんと山崎氏のやりとり、いかがでしたでしょうか。

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山崎和邦(やまざきかずくに)

山崎和邦

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、近著3刷重版「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)等。

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