北朝鮮とヒラリー、ゴールドマンを結ぶ点と線~半島有事は近いのか=高島康司

これまで2回の記事(第1回第2回)では、アメリカが政策を転換し、北朝鮮のキム・ジョンウン体制の本格的な崩壊を目標にした可能性があることを詳しく解説した。

アメリカは、2000年から2006年まで続き、セルビア、ウクライナ、グルジア、キルギスなどの多くの独裁政権が倒れた「カラー革命」や、2010年12月から始まり、中東全域に拡大した「アラブの春」など、国内の民主化要求運動を利用して政権を転覆する方法を実施してきた。

日本の主要メディアでは「カラー革命」や「アラブの春」は民衆による自主的な民主化要求運動の成果だと報じられているが、これらを米国務省が背後から画策していたことは多くの調査記事やドキュメンタリーから具体的に明らかになっている。

もし筆者が予測したように、オバマ政権が政策転換し、これからキム・ジョンウン体制の本格的な崩壊を誘導する方向に動くのであれば、「アラブの春」などの過去の例を参照すると、どういうタイミングでどのようなことが起こるのかある程度予測できるかもしれない。(未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ/高島康司)

北朝鮮崩壊はあるのか?米国の行動原理から見えてくるもの

アメリカによって計画されていた「アラブの春」

アラブの春」は2010年12月、チュニジアの地方都市で警察官の横暴に抗議した野菜売りの青年の焼身自殺から突然と民主化要求運動に火がついたように報じられているが、実はそのはるか以前から計画されていたことは、数々の調査記事や「革命ビジネス」などの優秀なドキュメンタリーで詳細に明らかになっている。

カラー革命」と同様、チュニジアやエジプトをはじめ「アラブの春」の中核となった国々で革命を主導したのは、民主化を要求する青年組織であった。

これらの青年組織は自然発生的に出てきたかのように報じられているが、事実はそうではない。青年組織の中心的なメンバーは、セルビアのベオグラードに本部がある「非暴力抵抗戦略センター(CANVAS)」という組織によって事前に革命のトレーニングを受けていた。

ちなみに「CANVAS」は、2000年にセルビアの独裁的なミロシェビッチ政権を打倒した青年組織「オトポル」の中核メンバーが、政権交代後も世界各地の民主化要求運動を支援する革命コンサルタントとして立ち上げたものだ。この組織が米国務省の資金援助を受け、その指令の元に動いている証拠は枚挙にいとまがない。

「CANVAS」のチーフインストラクターであり、組織のスポークスマンのセルジャ・ポポヴィッチは、先のドキュメンタリー「革命ビジネス」のなかで自分たちが「アラブの春」を各国で計画し、トレーニングした実態を詳しく話している。

それによると、民主化要求運動が起こる約1年くらい前から青年組織のメンバーのトレーニングを行っているという。

米国務省の関与と「青年連帯運動」の結成

しかし、「CANVAS」は実際のトレーニングを実施する現場の組織に過ぎない。革命の中核となる青年組織の結成そのものに深く関与したのは、2008年にニューヨークで米国務省の公式の支援で結成された「青年連帯運動」という組織である。

この組織は各国で民主化要求運動の中核となる組織の結成を促進すると同時に、グーグル、フェイスブック、ユーチューブ、ハウキャストなどの最先端のIT企業のほか、AT&T、Access360などのIT系インフラ企業、さらに各国のNGO組織がネットワークを形成し、民主化要求運動を組織するためにSNSやあらゆるタイプのITツールの効果的な使用方法を徹底的に訓練した。さらにはこの組織の結成には、コロンビア大学も全面的に協力している。

「青年連帯運動」の第2回総会は、2009年にメキシコのメキシコシティーで開催され、第3回は2010年にロンドンで開かれた。それ以降は「ムーブメンツドットオルグ」というオンラインのポータルサイトとなり、インターネットを通して民主化要求運動に必要なITツールを提供している。

現在でも、2009年に開催された第2回総会のプロモーションビデオを見ることができる。日本語の翻訳はなく全部英語だが、組織の目的と雰囲気はよく分かるはずだ。
Youth Alliance Movement Summit – YouTube

また、2008年の第1回総会では当時のヒラリー・クリントン国務長官はビデオで基調演説を行っている。その模様も見ることができる。
Secretary Clinton Addresses Youth Movement Summit – YouTube

ヒラリー・クリントン氏による2010年11月の論文

こうした動きを見ると、「アラブの春」は自然発生的な運動ではなく、当時のオバマ政権によって周到に計画され、準備された様子が見て取れる。ムバラク政権の打倒を主導した「4月6日運動」のメンバーも「青年連帯運動」の支援を受け、「CANVAS」の訓練を受けていたことが分かっている。

そして「アラブの春」が本格的に始まる直前の2010年11月、アメリカの外交政策の奥の院である「外交問題評議会(CFR)」が発行する外交誌「フォーリン・アフェアーズ」に、当時のヒラリー・クリントン国務長官の論文が掲載された。「市民の力で主導する(Leading through civilian power)」という題名の論文である。

この論文では、前ブッシュ政権が引き起こした2003年のイラク侵略戦争が、サダム・フセインの独裁政権の打倒には成功したものの、軍事力を用いたためにあまりに高い代償を支払う結果になってしまったとし、今後反米政権の体制転換を実施するときには、民主化要求運動のような市民の主体的な力を利用しなければならないと主張する内容であった。

いわばこれは、2008年から続けられた「アラブの春」の準備の最終段階を宣言するような内容の論文だった。

Next: 北朝鮮はどうなるか?米国が外交目的を達成する際の特徴とは

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