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赤字でも巨額の経営者報酬、広がる従業員との格差。元凶は「穴だらけ税制」にあり=矢口新

日本でも格差拡大

これは米国だけの問題ではない。程度の差こそあれ、日本も同様だ。

社会主義国は、圧政に苦しむ者、世の中を良くしたいと望む者の良心や志を巧みに利用し、指導者たちの独裁システムを作り上げた。

資本主義国は、誰にでも開かれた自由な市場という名目で寡占化を進め、かえって多くの人々を貧困にした。地方のシャッター街はその1つの象徴だ。100年を超えるような老舗の店が次々と店を畳んだ。どんなに良いシステムでも、使い方次第では多くの人々が苦しむことになる。

勝てば官軍なのか? 2024年から1万円紙幣の顔になる渋沢栄一は、人心の乱れを早くも明治時代に嘆いている。その著書「論語と算盤」から以下にその部分を引用する。

徳川三百年間を太平ならしめた武断政治も、弊害を他に及ぼしたことは明らかであるが、またこの時代に教育された武士の中には、高尚遠大な性向の人も少なくはなかったのであるが、今の人にはそれがない。富は積み重なっても、哀しいかな武士道とか、あるいは仁義道徳というものが、地を払っておるといってよいと思う。すなわち、精神教育が全く衰えて来ると思うのである。

われわれも明治六年頃から、物質的文明に微弱ながらも全力を注ぎ、今日では幸いにも有力な実業家を全国到る処に見るようになり、国の富も非常に増したけれども、いずくんぞ知らん、人格は維新前より退歩したと思う。否、退歩どころではない。消滅せぬかと心配しておるのである。ゆえに物質文明が進んだ結果は、精神の進歩を害したと思うのである。

出典:渋沢栄一著、論語と算盤(角川ソフィア文庫:P64~65)

税制改正で貧富格差の是正を

赤字会社の経営者が空前の報酬を受け取るシステムはおかしい。

ゲームと言ってしまえばそれまでだが、成果の分配システムの不備で富が偏在し、苦しむ人々が増えているのだ。

社会主義国が独裁政治になってしまったのは、民意を反映することができない「上がすべてを決めるシステム」だからだ。

資本主義国で貧富の差が拡大し続けるのは、「格差を拡大する税システム」だからだ。赤字会社のCEOが巨額の報酬を受け取っても、その大部分を政府が徴収し、貧富格差の是正に充てれば、格差は目に見えて縮小するはずだ。

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『日本が幸せになれるシステム』目次

まえがき:税収増が見込めない税制
第一章:日本を破壊した税制
1.税率を上げても増えない税収
2.消費税収は成長率、所得税収、法人税収とトレードオフ
3.消費税は経済成長を止めた
4.アベノミクスによる成長率はほぼゼロ
5.いざなみ景気の税収面での貢献はネガティブ
6.世界経済のミラクルは、日本から中国に変わった
7.アベノミクス、真の成果は?
8.雇用形態の変容
9.世界から乖離していく日本の実質賃金
10.名目賃金のターニングポイントも消費増税と一致
11.1997年から資金供給量は11.2倍
12.日銀は「物価しか見ていない」
13.銀行の預貸ギャップが290兆円に
14.マイナス金利政策の導入
15.アベノミクスは金利市場を破壊した
16.民間から政府への所得移転
17.物価の推移
18.消費増税でディスインフレに
19.消費税では社会保障費を賄えない
20.借金頼みの財政
21.消費税導入は法人税率引下げとセット
22.法人税率引下げで得たもの
23.赤字企業も急増
24.消費税は売上から天引き
25.所得税
26.個人住民税
27.One For All, All For Oneの虚実
28.格下げ
29.膨らむ公的債務残高
30.ギリシャやイタリアは緊縮財政
31.日本は113カ国中、113位
32.純債務残高でみると?

第二章:つくられた貧富格差拡大
33.つくられた貧富格差拡大
34.貧富格差の拡大は止められる!
35.日本の税収推移
36.日本の税収構造
37.デンマークの税収推移
38.デンマークの税収構造
39.スウェーデンの税収推移
40.スウェーデンの税収構造
41.OECD内32カ国の政府支出
42.日本、デンマーク、スウェーデンの財政収支の推移
43.主要国の所得税率の推移
44.世界の法人税率の推移
45.財政黒字の国は一握り
46.通貨の価値

第三章:崩壊前夜の社会保障制度
47.日本の公的社会保障支出
48.社会保障費の内訳と財源
49.高齢者の年金依存度
50.国民健康保険
51.1人当たり医療費
52.政府の教育支出
53.社会保障関係費の推移
54.国民負担率の推移
55.ダイヤモンドになったピラミッド
56.日本人の死亡原因
57.厚生労働省の見積もり

あとがき:衰退から繁栄へ

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  • ビットコインが法定通貨に ー 相場で不確実な時代を乗り越える(6/15)
  • 貧富格差は税制で是正できる ー 相場で不確実な時代を乗り越える(6/8)

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相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』(2021年6月7日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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