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日本を襲うコロナ・低賃金・物価高の三重苦。米国の「一過性」インフレとは異なる危険な兆候=斎藤満

米国の「一過性」インフレとは異なる日本の事情

川上の動きから見て、8月以降も物価上昇圧力がかかる可能性が示唆されていますが、これらが米国でいうような「一過性」のものかどうか、チェックしてみる必要があります。

米国と同様、資源価格高など、海外からの輸入インフレ圧力にさらされている点は共通です。原油価格はこのところ頭打ちの感が見えますが、資源価格全体の上昇が一時的かどうかは予断を許しません。

また半導体不足などは日米で共通していますが、中国での洪水や供給体制の遅れから見て、その解消にはまだ時間がかかりそうです。一時的というには、やや長めと見る必要あります。

そして日米で決定的に異なるのが、規制解除による経済再開と、これによる需要回復の集中です。

米国では確かに経済規制が短期集中的に解除されました。ワクチン接種の高まりで、感染者数が減り、続いて入院患者、死者数が明らかに減ったため、多くの州で外でのマスク着用の義務を外したり、スポーツイベントでの観客の入場制限も解除。旅行需要も急回復して航空需要、クルーズ船の需要も急回復しました。これで旅行関連の価格が上昇した面はあります。

当局はこの需要集中が一巡すれば、物価上昇も和らぐと見ていて、実際7月の航空券価格は0.1%ながら下落しました。

これに対して日本の事情はまったく異なります。そもそも、緊急事態宣言を発令し、まん延防止等特別措置をとりながらも、人流は減らず、他の国のようなロックダウンなどの規制が取られたわけではありません。あくまで「お願い」ベースで国民、企業の自粛を求めたのですが、次第にこの要請を無視する動きが広がっています。緊急事態宣言下で酒類を提供する飲食店が増えています。

またワクチン接種のペースもここへきてワクチンの供給制約からスピードダウンが目立ち、一時1日140万回を超えていたのが、最近では1日60万回台に低下し、予約をキャンセルされるケースも見られます。2度のワクチン接種を完了した人はまだ4割にも届きません。このため、日本の新規感染者数はデルタ株優勢の中で、1日2万人を超え、全国的な感染爆発になっています。

これを見ると、欧米のような規制解除は遠く及ばず、緊急事態宣言やまん延防止等特別措置の適用拡大、期間延長のリスクが高まっています。

つまり、米国のような経済再開による需要の集中がない中で、物価がジワリと上昇している形になっています。その分、一時的では済まない上昇と言えそうです。

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