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なぜ日本政府は危機に弱いのか。迫る3つの厄災、「責任逃れ」を許す意思決定システムの欠陥で亡国へ=高島康司

なぜここまでチグハグなのか?

このように、危機が起こったとき、日本政府の対応はあまりに遅く、それもチグハグで、まともに対応しているとは到底思えない。日本の政治や行政の機構は正常時のルーティーンワークには対応可能だが、日常業務を逸脱する危機的状況には、ほとんど対応できていないのが現状だ。

しかし、それにしてもなぜこれほど対応がチグハグで、遅いのか?中国がやったように、野戦病院などなぜすぐに作れないのだろうか?こうしたあまりにまずい危機対応の原因はなんだろうか?

その原因ははっきりしている。日本の権力中枢で戦前から続く意思決定のシステムである。それは以下のような特徴を持つ。

<原因その1:強いリーダーを排除するコンセンサス主義>

日本の意思決定システムは、強いリーダーシップを排除する合議制が基本だ。そのため、権限をリーダーに集中する危機対応型の計画がもともと存在しない。そのため、危機が起こると関係組織や機関の担当者が集まる調整から対応が始まる。この調整過程では、それぞれの関係機関の利害や部分的な合理性に基づく議論が行われ、まとまった結論が出せない状態に陥る。その結果、すべての関係機関が納得できる抽象的で中身のない結論になる。対立した議論の両論併記と、具体的な方針の非決定が一般的だ。

<原因その2:責任回避の構造>

関係機関の担当者による合議制なので、責任を取るものがいない。これは司令塔になる中心がないということなので、問題が発生すると迅速な対処ができなくなる。問題が発生するたびに、関係機関の担当者による調整と合議が始まる。

危機への対処は不可能

これが日本特有の意思決定システムである。危機の状態では、司令塔に権限を集中し、その指示で一斉に動くことが必要になる。しかし日本の合議制的なシステムでは、日常的に発生する小さな問題には対処できるかもしれないが、危機の対応は困難だ。関係機関のコンセンサスを取るための調整と合議に時間がかかり、結論が出るころには危機はもっと大きくなっている。また結論が出たとしても、関係機関の利害を合算した抽象的で中身のないものになっていることが多い。

日本政府や官僚機構のこのような意思決定システムの弱点が露呈したのが、新型コロナウイルスのパンデミックが初めてではない。この構造はすでに戦前から存在しており、日本が危機に陥ったときにはいつも、いわば血栓のように危機の早期解決の障害となってきた。

その具体例を上げればきりがないが、たとえばバブル崩壊後、銀行が抱える膨大な不良債権の処理問題がある。この処理ができないと、資金難に陥った銀行による企業への貸し渋りや貸し剥がしが横行し、企業倒産の増加から不況が長期化する。

当時の日本政府が不良債権の買い取りを行う「整理回収機構」を立ち上げたのは、バブル崩壊から5年も経った1996年である。2008年の金融危機のとき、アメリカの中央銀行であるFRBは、1年以内に銀行の不良債権を買い取り、危機を一気に克服した。日本の対応とはあまりにも対照的だ。

Next: 「自分たちでなんとかして」国民に対応を投げ返す政府

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