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岸田政権は日本株の敵か味方か。伸びる企業・低迷する企業トップ10を政策別に解説=栫井駿介

株式市場にとっては向かい風

その1つが、この「人生100年時代の不安解消」の部分です。

「働き方と関係なく充実したセーフティーネットを受けられるように、働く方は誰でも加入できる勤労者社会保険の実現」と書かれています。

これは、今パートで働いている人だったりすると、社会保険には加入していなかったりするわけです。しかしそれを働いていれば全て加入しなければならないということになると企業の負担が大きくなります。

私自身も会社を経営しているからよくわかるのですが、社会保険料というと一般的に給料金額の15%は給料から差し引かれるのですが、企業としてはそこにさらに15%差し引かれた分と同じだけ上乗せして、社会保険料を支払わないといけません。その分だけ当然、人件費コストというのが重くなるわけです。

これは今現時点で社会保険料を払っていない非正規雇用の従業員が多い企業にとっては、少なくとも一時的には大きく利益を削ぐ要因となり得るというところになってきます。

また、「公的価格の抜本的見直し」というのもあります。「あなたの所得が増える」とも書かれているのですが、所得が増えるということは、企業が払う給料が増えます。つまり、コストが増えるというところですから、働く人たちにとっては良いかもしれませんが、企業にとってはやはり一部マイナスになり得る可能性もあるというところになってきます。

では、このような政策が個別の企業に対して、どのようなメリットデメリットをもたらすのか、影響を受ける企業をランキング形式で紹介してみたいと思います。

ポジティブ:設備投資減税

まず、設備投資減税です。

設備投資減税が現時点では一部行われている部分もあるのですが、主に中小企業に対してだったりします。これが大企業とかあらゆる業種に広がっていくということになると、上場企業で恩恵を受ける企業もあるのではないかと思います。

そしてそれが売上高に対する比率が高いほど、設備投資に対して何%が減税になるといった話になる可能性があるので、そういった企業設備投資の高い企業というのを注目しておくといいのではないかという風に思います。さらにいうと設備投資が大きい企業ということを認識しておくことで、直接的に岸田政権の影響を受けなかったとしても、今後の分析に大きく役立てることができます。

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では、そのランキングをお示ししますと、7位と10位に挙がっているのはAGCと信越化学工業でこちらはいずれも「バケ学」と呼ばれる業界で、主に工場などへの投資に充てられているというところになっていきます。AGCも信越化学工業いずれも半導体などの高度な製品を作る為に、化学企業というのは今や欠かせない存在になっているわけです。このあたりは世界的に見ても日本企業は強みを持っているところです。またこの半導体とかグリーンとかそういった投資に関しては、政策の追い風を間違いなく受けるところですから、どういった政策になるかあの未知数ですけれども、事業拡大という意味でも減税という意味でも今後面白いのではないかという風に見ています。

また設備投資でいいますと2位の楽天グループ、それから9位のソフトバンクグループです。楽天に関しては今CMでやっていますが楽天モバイルの基地局を作る為に売上の34%も割いてどんどん投資を行っているわけです。これ自体が吉と出るか凶と出るかというところはありますが、とにかく大きくなっています。9位のソフトバンクを見ていただいても、やはりこの携帯電話事業というのは常に設備投資がかかる事業ということは、まず認識していただいていればいいのではないかと思います。ちなみに私は楽天の設備投資に関しては、今後かなり高いリスクとなっていること確かだと思っていて、採算が取れるのかといったことは今後注視して参りたいと思っています。

それからの6位と8位に関西電力、九州電力といったところが入ってきます。電力会社はもちろん設備をたくさん持っているというところもありますし、これが大きくなっている理由としては原発です。いずれも再稼働をさせる原発があるいうところですけれども、再稼働させる為には今実はものすごい投資が必要で、例えば原発に水が入ってこないようにする為の防潮堤という巨大な物を築いたり、あるいはテロ対策なんかでものすごいお金が必要になってきます。この辺は減税云々に関わらず必ずしも採算が合わないのではないかと思っています。

ちなみに原発に関しては岸田さんはどちらかというと再稼働方針ということになっていますから、そういった意味では電力会社に対してプラスではあろうかと思いますが、ただし設備投資による費用が大き過ぎるという側面は間違いなくあります。

3〜5位に入る三井不動産、東京センチュリー、三菱地所は、不動産会社だったり、リース会社だったりするので、おそらく設備投資減税の恩恵を受けることはほぼないという風に考えられます。強いて言うならばこの東京センチュリーに関しては、太陽光発電に巨額の投資を行っています。グリーンの減税のということは十分に考えられるので、この辺りも結構、注目して見ていきたいという風に思います。

そして、売上高設備投資比率ランキング1位は「JR東日本」です。これは広い地域に鉄道網も持っているので、そもそも設備投資産業ということができます。今コロナで売上高が下がっているので、この比率が上がりやすくなっているということにもなってきます。また投資の内容としては今首都圏の鉄道に事故を防ぐ為のホームドアを設置しているのでその投資が大きくなっています。そういったビジネスモデルとか現場の状況というのを把握しておくと、今後何か動きがあったときはすぐに理解を深めるということができるのではないかと思います。

Next: 岸田政権で伸びる企業は?研究開発費と非正規社員比率に要注目

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