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ワークマンに異変アリ。株価1年で3割減、土屋CEO「しない経営」が成長持続のカギ、次の一手は?=栫井駿介

土屋CEOの「エクセル経営」で社員全員が強みを再確認

では、なぜワークマンがそれを可能としたのかというところについて、深く見ていきたいと思います。

ワークマンの業績が伸びた要因は、先ほどから説明しています通り、ワークマンは作業服という非常にニッチな市場ではありますが、その中ではガリバーでした。

しかし成長の限界というのも見えてきました。

作業服市場が全く無くなることはありませんが、一方で拡大するような市場ではありません。

そんな中ですでにワークマン店舗数としては、2010年代前半の頃でも800店舗近くありましたから、こういった小売店の場合、全国の店舗数がおよそ1,000店舗ぐらいが限界と言われています。

1店辺りの商圏が10万人が限界と言われています。もう1,000店舗が見えていましたから、実は成長の壁に突き当たっていました。

そこで採用されたのが、土屋さんという人です。社長ではないのですが、その方がこのワークマンの経営を大きく変えました。

この作業服という事業に対して、「エクセル経営」を持ち込みました。エクセル経営とは何かというと、要するにデータを分析することによって、顧客の動向を把握して、そして顧客のニーズに合った商品を生み出すというものです。

こういったことをやろうとすると、多くの企業は、外部から専門家を連れてきて、分析させてその数値を割り出して、数値を細かに分析して結論を導き出すみたいなことをします。

けれども、ワークマンはそうではありませんでした。むしろ外部の人材ではなくて、もともといる従業員に対して、エクセル教育を行うことで一人一人がデータアナリストとして、ワークマンの経営を磨いていこうという意識を持つに至りました。

そもそもこのワークマンはアナログワークマンと自分たちでも言っているように、もともとデータなんかほとんど無い、何なら在庫データすら持っていないという会社でした。

それに対して全従業員にエクセルの研修をやって、数値の分析の仕方を教えることによって、自分たちが一体何をしているのか、どういった方向に向かっているのかということを、数値を用いて深く認識させたました。

多くの会社では何を売るか、店舗に何を仕入れるかというのは、そこにいる人達の勘と経験によって行われているものなのでしょうけれども、そこにこうやって数値データを用いたことによって、売れ筋商品というのが明確に分かるようになりました。

売れている物を売れていない物を勘で決めるのではなくて、数字でちゃんと売れている物を仕入れるということができるようになりました。

予想外のニーズを発掘。人気商品の量産に入った

さらに予想外の事も起きまして、そうやって数値を分析していると、時々異常値が発生することがあります。

例えば、ある地域の店舗で他ではあまり売れていないような特定の商品が、バカ売れしている。他の店舗の10倍ぐらい売れているということが起きたりします。

通常の統計的な分析仕法では、そういったものは異常値として取り除くのですが、ワークマンでは敢えてその異常値は一体何なのかということを、単に数値ではなくて、実際に具体的に分析しました。

するとわかってきたのが、作業用の靴として売っていたものが、実はすごく滑りにくくて安心だということで、妊婦の方が買われていたということが明らかになりました。

そうやっていくうちに実はワークマンが対象にできる市場というのが、この作業服という限られた範囲だけではなくて、カジュアルとかアウトドアといったところにもニーズがあるんだという事に気が付けるようになりました。

しかもワークマンは1,000店舗近く持っていたので、すでに規模の経済を発揮できる状況でした。

そうやって同じ商品をかなり安く売れる状態になっていて、なおかつ機能性もありますし、そこに新たな売り文句を付けて、新たなアウトドアやカジュアルといった市場に、投入したことによって、自らの市場範囲を拡大することができました。

だからこそ成長しましたし、ここから生まれてきたのが「ワークマン+」でした。

つまりこのワークマンがアウトドアやカジュアルに進出したのは、最初からそこに進出しようと思って進出したのではなくて、エクセル経営によって、データを分析したことによって、すでにもうある潜在ニーズを確実に掴むことができた、だからこそ失敗することなくこれらの新市場に進出することができました。

Next: 土屋CEO「しない経営」は何をしたのか?

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