土屋CEO「しない経営」で起きた変化
この経緯を表しますと、元々持っていた強みで、作業服市場、あるいは作業員のニーズというのを把握していました。
作業員というと過酷な環境で働くので、寒いところだと暖かくしないといけないですし、雨にも風にも耐えられて、そして足元は当然滑らない物、そういったも必要とします。
それをなんとか全国に展開することで、安く作業服を作る技術に関しては、すでにかなりの部分を持っていました。
そして全国で1,000店舗あるので日本中どこでも売れるそういった状態でした。
それだけの規模の経済を発揮できますから、コスト競争力で同じ物を作るにしてもより安く作ることができました。
ここに大きな変化をもたらしたのが2012年にやってきた土屋CEOです。
スーパーマーケットベイシアグループの創業者である土屋さんの甥なんですが、三井物産に勤めていたということですが、そこから招聘されてやってきます。なので創業家ではあるのですが、ちゃんと実績を商社で詰んできました。
商社では様々な新規事業の立ち上げに関わったというので、経営に関してはすでにかなり知っているところがあった、つまり創業家の強みといわゆるプロ経営者としての強みどっちも持っていた、そういう器用な人材だったということができます。
そしてワークマンに持ち込んだのが先ほど説明したようなエクセル経営です。
そしてこの人自身が新たなマーケットを開拓していくというのはこれまでもやっていますし、それが得意だということなので、新規市場開拓という精神を持ち込みました。
さらには著書にもあるのですが「しない経営」ということで従業員管理に長けていました。
この”しない”というのは頑張らないとか社内行事をしないといった、いわゆる昭和の経営スタイルと真逆を行くようなそういった経営でした。
この人は曰く無理をしてもどうせ続かないと、だったら5年10年と先を見た時にちゃんと会社に根付くような経営スタイル、従業員の働き方のスタイルを見つけていかなければいけないという先進的な経営スタイルを取り入れた方だったということができます。
従業員の給与もそれまで500万円台だったものが、今や700万円台に増えています。
これも給料100万上げるという宣言をして、従業員に頑張ってもらったという部分があります。
こういったこともあってワークマンも成長を遂げてきました。
ニーズの“スキマ”を発見
さて、このワークマンのポジショニング。いったい何がすごかったのかいうところを、もう少し細かく分析してみたいと思います。
例えばアウトドア市場というとメジャーなプレーヤーとしては、ノースフェイス、パタゴニア、コロンビア、モンベルといったブランドがあります。
けれどもこの辺は確かに機能性は高いですが、やはり値段が高いというところはあります。アウターを買うとしたら1着1万円〜2万円と、そういった物を売っているところだと思います。
ここに対して実は安く買おうと思ったら、当然安かろう悪かろうですから、その他大勢としては、価格は落ちて安くなるけど、一方で機能性は十分ではないものが売られているというところです。これは買っても仕方がないというものです。
そんなところに風穴を開けたのが、このワークマンとなっています。
すでに作業服市場で全国に展開していたので、規模の経済を発揮できて、しかも作業員という過酷な環境にいる人達の物を売っていましたから、その機能に関しても十分なものを持っていました。
それを作業服という場所だけで展開していたのですが、その強みをアウトドアで活かしている人達がいました。
そしてそれが売れ筋のエクセルの異常値として現れてきたことによって、ワークマンはその変化、その兆しに気が付くことができました。