米バイデン政権がウクライナに在留するアメリカ人に退去勧告を出しました。日本もそれに続き、日本人の退去勧告を出しています。正直な話、何を根拠に言っているのかさっぱり理解できません。ウクライナ問題を整理してみましょう。(『角野實のファンダメンタルズのススメ』)
※本記事は有料メルマガ『角野實のファンダメンタルズのススメ』2022年2月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:角野實(かどの みのる)
大学卒業後、金融機関に10年ほど勤務。独立して投資家の道へ。現在は企業経営者として活動、FX関連の執筆を多数行っている。
ウクライナとロシアの紛争の歴史
もともとウクライナは、ソビエト連邦の一員で、ソ連崩壊とともに分離独立を果たした国です。この遠因はベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統合したことに起因します。西側がNATO、東側にワルシャワ条約機構がありましたが、東西ドイツ統合を境にワルシャワ条約機構は崩壊の過程にはいるのです。
この際にパパブッシュや当時の国務長官はソ連が譲歩したことにより、NATOをこれ以上東側に拡大をしない、と言明をしているのです。
この解釈の問題が、現在のロシアとアメリカの争いになっているのです。ご存知のように米国は都合のよい解釈をして、そんなことを約束した覚えはない、と文書でロシアに回答をしているのです。
その後のトラブルはさまざまありますが、経済的に苦しい時期にあったウクライナは、ウクライナを通過するパイプライン、ノルドストリームからガスを抜き取ったり、ガス代金を未払いにする、などとロシアに迷惑をかけ続けます。
怒ったロシアは突然、真冬の最中にガスの送管を停止します。ドイツはロシア産のガスに供給を頼っていましたので、慌てました。
そこで、解決策として供給と送管の別管理、ということがドイツで決定され、送管の会社と供給の会社を別会社にすることによって、この問題を解決したのです。
この供給と送管を一手に担っていたのがロシアのガスプロムになります。
当然、ロシアはこの決定には不服がありましたが、その後に起こるロシアのデフォルトなどを考えれば、ロシアはこの決定をのまなければいけない状態でした。
その間に、ウクライナも政情が混乱していましたが、自分たちに都合のよい決定を下してくれる西欧圏に政権が流れていくのは必然となるのは誰の目にも明らかなことです。
一方でロシアに依存をする人々もいますので、当然、対立は激化します。
民主主義の決定が自分たちに利益をもたらしてくれる方に流れるのは自然なことです。これに対してロシアが激怒している、ということでしょう。
エネルギー資源を狡猾に利用するロシアの戦略
ロシアは、GDPの20%がエネルギー関連からの収入です。そして輸出は、60%程度がエネルギー・資源からの収入です。
ロシアは「エネルギー国家」とみなされていますが、今の電気自動車や風力発電に使う磁石などに使うレアアース、貴金属も豊富な資源があります。
プーチンはそのエネルギーに着目し、そのエネルギー関連の資産を国営化することに大統領に就任してから腐心をしています。
その結果、新興財閥、ソ連から国営企業を買い叩いた連中を、なんだかんだと理由をつけて放逐しているのです。
この言い方ですとプーチンが悪いような印象をもつかもしれませんが、新興企業の方もロクなことをやっていません(笑)。
その結果、毒殺や亡命などのニュースが流れ、プーチンのイメージはますます悪化するというスパイラルになっています。
ともかくプーチンは、エネルギー戦略で、ロシアを昔の超一流の国家に仕立て上げようとしているのです。