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目前に迫るロシア国債デフォルトで日本が財政危機に陥るワケ。4月からの値上げラッシュはインフレの序章に過ぎない=高島康司

日本の財政に及ぼす影響

先に書いたように、ロシア国債のデフォルトが小麦をはじめとした農畜産物の供給減少の引き金になるというのは、いまの段階では仮説に過ぎない。ロシア国内の状況がまだよく分かっておらず、十分な確認が取れていない。もっと詳細な情報が確認できれば、改めて記事に書く。しかし、これからもインフレ率の上昇に歯止めがかからなくなるのは間違いようだ。

またこれは、とりわけ日本にとっては危険な状況になり得る。それは、日本におけるインフレの高進は財政逼迫の懸念につながるからだ。

これがどういうことなのか、簡単に復習して見よう。

【関連】2022年、日本国債「大暴落」に現実味。スタグフレーションで利上げは不可避、日銀の債務超過と財政破綻に警戒せよ=高島康司

日銀の債務超過

周知のように日銀は、いまでも続く「アベノミクス」の異次元的金融政策で毎年国債を大量に買っている。そのための資金として日銀は、日銀券の追加発行で対応している。日銀券の流通量の増大が円安の理由だ。

だが日銀のバランスシートでは、日銀券の発行は日銀の負債として計上される。これは、日銀券がゴールドの現物と交換可能であった金本位制の時代の名残である。その当時、日銀が保管しているゴールドは日銀券を保有するものに所有権があった。日銀券はいわば債務証書のようなものだった。金本位制が廃止された現在でもこの伝統が引き継がれている。

2020年末の時点で、日銀の総資産が約724兆円に対し、負債は約659兆円となっており、65兆円程度しか資産が負債を上回っていない。相当にタイトな状況になっている。もちろん、これですぐに日銀が債務超過に陥るわけではない。だが、目標とした2.0%を越えてインフレが進み、金利を引き上げざるなくを得なくなると、債務超過に陥る可能性が出てくる。

それというのも、日銀の負債の大半は、日銀券と民間銀行が預けている当座預金だからだ。いま新しい当座預金はマイナス金利になっているが、既存の預金には1%程度の金利がつく。他方で日銀は、保有する資産としての国債があるので、政府からの利払いがある。これは日銀の収入になる。

しかし、インフレ率の上昇で金利が上がるか、または「アベノミクス」の出口戦略で金利を引き上げると、日銀が当座預金に支払う利子が、政府から受け取る国債の利払い費を上回り、逆ザヤになる可能性が出てくるのだ。すると、ただでさえタイトな日銀のバランスシートは悪化し、債務超過になる。

そのような状態になると、日銀法では政府が日銀を資金的に支援する義務がある。すると、これまでのように日銀が国債を買って政府の経済政策を支えることはできなくなる。日本政府の財政は逼迫し、破綻の懸念も出てくる。もちろんこうなると、国債の信用は落ちるので、国債の暴落も回避できなくなる。

4月に入ると、日銀がターゲットとした2%のインフレが実現してしまう可能性が高い。インフレを抑制するためには、日銀は現在のような「アベノミクス」から脱却し、金利を引き上げなければならなくなるかもしれない。すでにその可能性を先取られ、日本国債が売られ価格が下落しているのだ。

国債の価格と利回りは逆に動く。日銀の国債買い取り通知にもかかわら、日本の10年もの国債の売りが進んで価格は下落しているのだ。一方、国債の利回りは0.25%に上昇している。

この後、どのような状況が待っているのだろうか?

Next: 日本の財政危機は2022年後半に訪れる?

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