4月4日に迫ったロシア国債のデフォルトの可能性
ところでいま、あまり報道されていない事態が注目されている。ただこれはいまのところ可能性のある仮説に過ぎず、どこまで現実になるのかは分からない。
それは、来週の4月4日に迫ったロシア国債のデフォルト(債務不履行)が、小麦などの農産物の生産量に影響を与える可能性である。
日本とは異なり、ロシアの政府債務は非常に少ない。財政はバランスしており、この点では主要国のなかでの優等生である。債務は少ないので、国債の発行残高も低い。
だから、通常の状態であれば、国債の利払いや償還で問題が生じることはまずない。
しかし、周知のように、ロシア中央銀行も欧米による経済制裁の対象になり、ロシア中央銀行が欧米の中央銀行の口座に持っているドルとユーロの預金が凍結されたのである。その結果、ドル建てやユーロ建ての国債の償還や利払いが困難になっている。3月31日の4億4,700万ドルの国債の利払いはなんとかなるとしても、4月4日に迫った20億ドル相当の国債の償還ができなくなる可能性が指摘されている。国家としてはたいした額ではないものの、いまのロシアの状況では償還は困難かもしれない。
しかし、3月29日、ロシア財務省は、4月4日に償還期日を迎える額面20億ドルのドル建て国債を、ルーブル建てで買い戻す方針を発表した。これは償還のためのドルが不足しているので、自国通貨に支払いを切り替えるのが狙いだ。ただ、支払い通貨を一方的に変更すれば、デフォルトと見なされる可能性が高い。そうすると4月4日のこの時点で、ロシア国債の価値は暴落する。
ロシアのデフォルトそのものの影響は小さい
しかし、ロシアのデフォルトそのものの世界経済に与える影響はかなり限定的だと見られている。ロシアの財政は健全で、国債の発行残高はもともと少ない。そのため、海外の金融機関が保有しているロシア国債の額もかなり小さいのだ。
2008年の「リーマン・ショック」では、破綻したサブプライムローンが混入した「CDO」という金融商品を、実に多くの欧米の金融機関が保有していた。「CDO」が実質的に破綻したため、多くの金融機関は莫大な不良債権を抱えることになった。この結果、銀行は相互に疑心暗鬼となり、銀行間で資金を融通し合う銀行間取引のネットワークが動かなくなった。これで多くの銀行は資金繰りに困り、破綻した。また破綻を免れた銀行も、自己資本を守る必要から貸しはがしや貸し渋りが横行し、企業を圧迫した。
ロシア国債がデフォルトしたとしても、まずこのようなことは起こらないと見られている。ちなみにアメリカの銀行は150億ドル程度のロシア国債を保有していると見られるが、これは金融システムに打撃を与えるような額ではない。
また「欧州銀行監督機構」は、3月初めにEU諸国で行ったプレゼンテーションで、ロシア国債の保有額は約900億ユーロで、銀行の保有資産の0.3%に過ぎないと発表した。さらに、「欧州保険・職業年金機構」の四半期データによると、ヨーロッパの保険分野のロシア国債の保有率は、保有資産全体の0.1%未満だとした。
したがって、ロシアのデフォルトがヨーロッパの保険会社の健全性に及ぼす直接的な影響は小さい。