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目前に迫るロシア国債デフォルトで日本が財政危機に陥るワケ。4月からの値上げラッシュはインフレの序章に過ぎない=高島康司

ロシア国内の銀行破綻と企業倒産の連鎖

しかし、これがロシア国内となると、まったく状況は異なってくる。

実はロシア国内の金融機関の状況はよく分かっておらず、これはまだ仮説に過ぎないのでなんとも言えない。だが、欧米やロシアのいくつかのメディアでは、可能性のあるシナリオとして検討されている。

それは、ロシア国債のデフォルトで、ロシア国内の金融機関が保有する国債が不良債権化し、これが原因となり「リーマン・ショック」のような金融危機に陥るのではないかとの懸念だ。

たとえこのような金融危機が起こっても、それはロシア国内のことなので、世界経済には大きな影響はないとも考えられる。

しかし、実はそうではないとする見方も最近は出てきている。

ロシア国内の金融機関がどの程度の額のロシア国債を保有しているのかは、まだはっきりしない。だが、もし保有額が大きかった場合、破綻する金融機関も出てくる。また破綻を免れたとしても、企業への貸しはがしや貸し渋りが横行する可能性は大きい。

そしてもしこれが、小麦をはじめとした農業分野で起こった場合、農家や企業の連鎖倒産の引き金となり、農業分野の生産に甚大な影響を及ぼす可能性が指摘されている。

実はこれは、「リーマン・ショック」直後の2009年にオーストラリアで起こったことだ。「リーマン・ショック」で危機に陥ったオーストリアの銀行の貸し渋りと貸しはがしのため、融資を拒否された多くの小麦農家が資金繰りに困り破綻した。これがかねてから天候異変で悪化していた小麦生産をさらに減少させ、世界的な食料価格高騰の背景のひとつになった。

もちろん、これが起こったのはオーストラリアだけではなかった。アメリカやカナダなど「リーマン・ショック」の余波で金融危機が拡大した農業国全般で起こったようだ。またこれは小麦だけではなく、銀行の融資に依存する小規模農家が多い農畜産業のあらゆる分野で発生した。

ロシア国債のデフォルトが原因でロシア国内で金融危機は発生しても、もともと銀行融資に依存する必要性がない巨額の資本を持つ「オリガルヒ」が支配する分野、たとえば天然ガス、石油、アルミニウム、パラジウムなどでは金融危機の影響は小さい。

だが、ロシアでもやはり小規模の生産者も多い農畜産業の分野では、同じような問題が発生する可能性もある。

いまはインフレの序章

さて、このように見ると、ロシアの国際送金システムの「SWIFT」からの排除という経済制裁が背景となり、ロシアが世界有数の供給国である小麦などの価格の高騰を招いている。

しかし、極端な話、ウクライナ侵攻が一段落し、インフレに耐え切れなくなった欧米が制裁を解除すると、ロシア産製品の供給は回復する。経済制裁によるインフレは人為的なものだ。供給力そのものは影響を受けていないからだ。

一方、ロシア国債のデフォルトに端を発する金融危機では、生産者が破綻するので供給力そのものが大きく減少する。回復するには相当程度の時間がかかることだろう。

このように見ると、いまのインフレはほんの序章にしか過ぎないことが分かる。欧米の経済制裁だけではなく、ロシア国内の金融危機による供給力の縮小がロシア産製品の価格はさらに吊り上げる要因として働くかもしれない。ということでは、いまのインフレはまだ序章にしか過ぎないのだ。

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