経済制裁で苦境に立つロシアに、国債デフォルトの可能性までささやかれはじめた。もし実際にデフォルトとなった場合、現在の世界的なインフレはさらに加速するだろう。そうなれば日銀も債務超過に陥り、日本の財政に深刻な影響を与えかねない。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年4月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ついに始まった食料品の価格高騰
ロシア軍のウクライナ侵攻を引き金に加速するインフレとロシアのデフォルト懸念、そしてそれらにともなって悪化しかねない日本の財政的な危機について解説したい。
欧米ほどではないものの、日本でも物価が急騰している。ガソリン価格の急騰は以前から続いているが、食料品の価格高騰も著しい。2021年末に一部食料品が値上げされたが、それに続き4月1日からはさらに多くの食料品の値上げが予定されている。
総務省の2020年を100とする消費者物価指数によると、直近22年2月の総合指数は100.7と前年同月比で0.9%上昇した。上昇率は次のようになっている。これは近年まれに見る上昇率だ。
・天然ガスや石油などのエネルギー:20.5%
・小麦などの穀物を中心とした食料:2.8%
また、物価をさらに押し上げているのは、円安にともなう輸入品の値上がりである。日銀が算出する輸入物価指数は、2月に円ベースで前年同月より34.0%も上がっている。円安は当分の間続くと思われるので、輸入物価の上昇は今後も続く可能性が高い。
ウクライナ侵攻による小麦価格の高騰
だが、やはりなんと言っても日本の物価高騰の大きな原因になっているのは、ロシア軍のウクライナ軍事侵攻であることは間違いない。
周知のようにロシアは、世界最大の天然ガスの輸出国である。また原油の輸出は世界第2位である。いまのところ天然ガスの輸出決済を仲介している「ガスプロム銀行」などは、国際貿易に使われる送金システム、「SWIFT」から排除はされていない。
だがロシアは、天然ガスの主な輸出先である欧州などに、ルーブルによる決済を求めた。日本を含めた欧米諸国はこれに一斉に反発し、これを拒絶した、これはロシア産天然ガス、さらにはロシア産原油の輸出が途絶える可能性があるため、コロナのパンデミックによる経済回復を受けて高騰したエネルギー価格を、さらに上昇させる要因になっている。
またロシアは、自動車の排ガスの浄化や、入れ歯の原材料に使われるレアアース、パラジウムの4割を生産する世界最大の供給国である。さらにウクライナは、半導体の製造のためのレーザーに使われるネオンガスの7割を生産している。
ロシア企業が国際送金システムの「SWIFT」から排除されて輸出の決済ができなくなったため、こうしたものの供給は不安定になり価格が高騰しているのだ。いまロシアは「SWIFT」排除の経済制裁を回避するため、暗号通貨を使った決済方法も模索しているが、いまのところ目に見える効果は出ていない。これらの物価高騰は避けられない情勢だ。
しかし、なんと言っても天然ガスや石油以上に大きな影響をもたらしているのが、穀物、それも特に小麦の価格高騰である。すでに小麦価格はウクライナ侵攻以前から上昇していた。やはりコロナパンデミックの後の経済回復による需要増大が背景だった。
ウクライナ侵攻の変化が反映される前の2022年4月期の小麦価格は。1年前の21年4月期に比べて39.7%、1年半前の20年10月期と比べるとなんと47.4%も上昇している。そして、小麦価格にロシア軍のウクライナ侵攻の影響が本格的に現れる22年10月期には、さらに上昇すると予測されている。
小麦はパンやめん類、そして菓子類だけではなく、醤油や味噌、そして飲料の原材料として幅広く使われている。小麦価格の高騰は、あらゆる種類の食品に幅広い影響を与える。これらのものは生活必需品だけに、エネルギーと同様のインパクトがある。
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