ロシア制裁でインフレが加速、世界中にスタグフレーションが広がる可能性が高まっている。日本でもこの波は止められず、日銀も金利の引き上げを迫られるだろう。その結果、日本国債が大暴落することもありえる。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年3月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
世界中に広がる「スタグフレーション」懸念
ウクライナ侵攻が引き起こした対ロシア経済制裁が背景となり、世界では止まることを知らないインフレが起こっている。それは、穀物を中心とした食料、資源などの原材料、そして天然ガスと石油のエネルギーである。
主要先進国では、新型コロナのパンデミックからの回復による需給ギャップが背景となり、ただでさえインフレが高進しているときにウクライナ侵攻は起こった。
どの国も高いインフレに苦しみつつある。
そうした状況でバイデン政権は、ロシア産の原油輸入を禁止する方針を発表した。まずはアメリカ単独で禁輸に踏み切り、エネルギーをロシアに依存する欧州の同盟国などについては各国に判断を委ねる見通しだ。
EUはこれに歩調を合わせ、2022年度中にロシア産天然ガスの輸入を3分の2減らす決定をした。
このような動きの影響で、欧州天然ガスの価格は一時79%も上昇した。また原油価格は、これから1バーレル、185ドルという史上最高水準になる可能性もある(※編注:直近ではOPECプラスが増産を検討しているとの報道を受け、原油先物価格が急落するなど乱高下しています)。
こうした高インフレの状況が背景となり、各国のスタグフレーションの懸念が高まっている。
スタグフレーションは資本主義経済をどう破壊するか
資本主義経済がもっとも懸念しなければならない癌(がん)は、スタグフレーションである。スタグフレーションとは、次のような悪循環のことである。
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製品価格に転嫁
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インフレ率が賃金の上昇率を超える
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賃金の上昇圧力(賃上げ要求の激化)
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製品価格に転嫁
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インフレの高進
インフレが高進すると、これがまた賃上げの圧力につながり、それがまた製品価格に転嫁されることからインフレがさらに高進するという悪循環になる。このままインフレの高進に歯止めがかからなくなると、いずれは企業の利益率を越えるようになる。すると、モノを買い占めて後で売ったほうが利益が出るような状況になるので、生産的な投資は減退する。すると、深刻な不況に陥る。
これがスタグフレーションだ。資本主義の癌(がん)とも呼ばれるゆえんだ。
主要先進国は1973年のオイルショックでこれを経験した。スタグフレーションの克服は困難を極め、日本を除く主要国は10年を要した。一方、早期の脱却に成功した日本でも、74年には24.5%のインフレ率を記録し、GDPもマイナス13.1%に下落した。
このように高いインフレ率が引き金になって発生するスタグフレーションには、本当に注意しなけれならない。