半導体を捨て去った東芝
90年代初頭までは本邦のエレクトロニクス産業と言えば、半導体の売上が大きく、1990年の世界における半導体売上は、NEC、東芝、モトローラ、日立、インテル、富士通、TI、三菱電機、フィリップス、松下電器と、完全に日本の電気メーカーがその座を席捲していました。
しかし、米国の画策もあって日本勢が得意とした高性能DRAMが世界的な価格競争にさらされ、日本の半導体メーカーは再編を繰り返した挙句、消滅することとなります。
その中でも東芝だけはなんとか競争力を維持してきたはずだったのですが、2018年には今回買収が取り沙汰されているベインキャピタルが率いる日米韓連合に売却する憂き目を見ています。
主力ビジネスを「原発」一本に絞った大失策
21世紀に入ってからは、半導体ビジネス不調のなかでなんとか業務を拡大する領域を模索してきた東芝でしたが、安倍政権と経産省が画策した原発の国策セールスに乗ってしまったのか、主力ビジネスを「原発」一本に絞ろうとしたことが、大変な損失をもたらすことになります。
よせばいいのに米原子力子会社ウエスチングハウスを買収した結果、多額の損失を計上する羽目になり、これがさらに2016年不正会計を引き起こす引き金となってしまいます。
これをきっかけにして、残しておけば今ならまた利益を稼ぎ出すかもしれないビジネスまで切り売りすることになり、ここ5年のこの会社の葛藤は、なんら業務改善に繋がらないまま、事ここに至っているというのが正直なところではないでしょうか。
半導体ビジネスの買収で、東芝をよく知るベインキャピタルは、いったいこの草木も生えないような東芝の残り香ビジネスのどこに光明を見出しているのかわかりません。
なんとか国内勢を組み入れることで、安全保障上の問題を解決し、このダメ会社を完全に廃業させることなく次のステージへと導いてほしいものだと感じる次第です。
一時は連結で22万人の被雇用者を抱えていたこの会社。いまでも連結対象企業では11万人が仕事をしているといいます。
比較対象が不遜で申しわけありませんが、この数は新型コロナの直近の国内感染者数の実に2倍以上ということですから、足もとでの雇用視点での社会的影響力は絶大なものがあり、このまま放置しておくわけにはいかない状況です。
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