3月末に行われた東芝の株主総会で、経営再建のために会社を2分割して企業価値を高める案が否決されました。最終的には外資の買収による非上場化の道を進みます。昭和を代表するブランドの惨状は、これからの日本の凋落を映す鏡のようです。(『今市的視点 IMAICHI POV』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2022年4月3日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
東芝とうとう非上場か
経営再建のために2分割にするだの3分割にするだのと、不毛の議論を大株主まで巻き込んで延々と行っている東芝<6502>。
とうとう米国の経営参加型プライベート・エクイティ・ファンドであるベインキャピタルが買収して、非上場化を目指すことで一件落着させる可能性がかなり高まりをみせています。
とはいえ、国内の安全保障上の問題から、外資のベインが単独で買収成功するとは簡単には思えない状況です。
しかし、すでに本邦の中でこの会社を救済する企業など見つかるはずもなく、もはやなんとか調整してこれを着地点にしなくてはならない状況に陥っているように見えます。

東芝<6502> 日足(SBI証券提供)
地に落ちた家電ブランドの名門
昭和、平成を生きてきた日本人にとっては、東芝といえば日本を代表する重電、家電の総合メーカーです。
特に家電製品では、松下と競争してシェアを確保したブランドであったことから、若者や女性、主婦にも知名度の高い会社としてブランドが形成されていました。
過去には家電製品をドラマの中に登場させるという発想から、TBSの「東芝日曜劇場」を長く一社提供してきましたし、「サザエさん」も長く東芝が30分全枠を提供していましたから、ブランドの知名度・理解度は競合他社と比較しても非常に高く保たれていたものです。
しかし、今はそうしたテレビの提供もすべて終了しています。
それもそのはずで、この会社は21世紀に入ってから医療機器部門も半導体も家電も売り払って、今や残っているのは巨額損失の原子力とインフラだけ。
そもそも広告対象商品をすべて失っていて、さらにそれ以前に広告するカネもない瀕死の状況に陥っているのが、現実となっているわけです。