日銀の黒田総裁は「円安は全体としてみると日本経済にプラス」と言い続け、円安をもたらす金融緩和の修正はまったく考えていないと言います。円安は日本経済に本当にプラスなのか?恩恵を受けるのは一部企業だけで、しわ寄せで生活が苦しくなるのは国民です。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年4月8日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
円安は日本経済に本当にプラスなのか?
円安が大きく進む中、政府財界からは懸念の声が出る一方、日銀の黒田総裁は「円安は全体としてみると日本経済にプラス」と言い続け、円安をもたらす金融緩和の修正はまったく考えていないと言います。
しかし、多くの国民からは円安で物価が上がることに懸念の声が強まっています。
円安は果たして本当にプラスなのでしょうか?そうなら大幅通貨安のトルコやアルゼンチン、ロシアは絶好調ということになりますが。
円安の利益は「一部の企業」に
円安で利益を上げるのは、海外でビジネス展開をするグローバル企業と輸出型企業、輸入品と競合する国内メーカーです。
海外に資産を持つ企業は、それを円評価する際、円安の分だけ資産評価が大きくなります。対外純資産が世界一の日本は、その恩恵を受けますが、それは一部の企業のものです。
またトヨタなどの輸出企業も円安で手取り額が大きくなり、利益となります。
裏を返せば、これら企業は円高の時に業績が苦しくなり、政府日銀に円高是正を強く求めました。これで日本のメディアはあたかも円高は日本全体にマイナスであるかのように報じ、中には「円高デフレ」とまで言う向きもありました。
実際には超円高となった1985年(プラザ合意)、1ドル80円割れとなった95年も、円高デフレにはならず、プラス成長で景気は拡大を続けました。
円高でもGDPの中の輸出は減らず、むしろ円高で個人消費が増え、内需が拡大して景気を支えました。
つまり、「円高デフレ」は実体のない「フェイク・ニュース」だったわけです。