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業務スーパー創業者が“地熱発電”を開発中。自ら私財を投じ地熱に関する専門学校も設立する行動力にSNS上で称賛の嵐も、「なぜ国がやらない?」と批判殺到

「業務スーパー」を展開する神戸物産の創業者が、現在は熊本県内で地熱発電所の建設を進めていると報じられ、多くの驚きの声があがっている。

再生可能エネルギー事業を手がける「町おこしエネルギー」は、業務スーパー創業者である沼田昭二氏が、その経営を長男に引き継いだうえで、2016年に立ち上げた新会社。現在開発中の熊本県小国町の発電所は、2024年4月に運転を開始する予定とのこと。

別の記事によると、開発を進めている地熱発電所の出力は4,490キロワットで、年間発電量は約3,449万キロワット時。発電した電気は九州電力に販売するといい、年間売上高は約14億円になる見通し。なお総工費は約100億円で、うち50億円を三菱UFJ銀行からの融資で調達したものの、それ以外は沼田氏の私財などから捻出されているという。

「なぜ国がやらない?」との批判も

現在、日本全国に960店舗以上を展開しており、今年中の1,000店舗達成が確実視されている業務スーパー。

その業務スーパーを展開する神戸物産だが、昨年末に発表した2021年10月期の連結決算では、売上高が3,620億6,400万円となり、利益とともに過去最高を更新。さらに今年3月に発表された22年1月期の連結決算でも、純利益が前年同期比11%増の51億円となるなど好調が続いてる。

そんな神戸物産の創業者が、なにゆえ地熱発電の開発を始めたのかというと、日本の食料やエネルギーの自給率が低く、いずれも海外からの輸入に依存している現状を憂いたからだという。実際、この地熱発電によって、自前かつ環境にも優しいエネルギーが得られるのにくわえて、発電の過程で使われる熱水を用いて、シジミやオニテナガエビといった海産物を養殖する研究も進めているという。

さらに、地熱発電に欠かせない掘削の技術者が、高齢化により人材不足になっている現状を受けて、沼田氏は北海道に地熱に関する専門学校も立ち上げたとのこと。

発電に用いる熱水と蒸気を得るために行われる掘削だが、それに失敗すると巨額の損が出るなど、開発の難しさが以前から指摘されていた地熱発電。それに私財を投じてまで取り組む沼田氏に対して、SNS上では称賛する声が多くあがっているが、そのいっぽうで「本来は政府が主導してやるべき」「なぜ国がやらない?」などと、原発再稼働の問題などとも絡めた国への批判も多くみられる状況だ。

ゲイツ氏ら出資会社も日本で地熱発電所を稼働中

今回取沙汰された「町おこしエネルギー」以外にも日本国内、とりわけ九州地方において、このところ地熱発電の開発や稼働開始の報道が相次いでいる。

今月8日には、地熱発電を手掛けるベースロードパワージャパンが国内3か所目となる地熱発電所を、熊本県内で稼働させたと報じられている。なんでもこの会社は、あのビル・ゲイツ氏らからもベンチャーキャピタルを通じて出資を受けているといい、今回の発電所で用いられた熱水は周辺の旅館の温泉で浴用として用いられるなど、周辺の温泉事業者にも配慮した設計となっているようだ。

さらにベンチャーだけでなく九州電力も、大分県九重町において地熱発電所の新設を検討するための調査を、この4月から始めると発表。九州電力は、すでに大分県内で試験的な掘削を行っているという。

日差しが強まった先週末は、9日に四国電力、10日には東北電力で、太陽光など再生可能エネルギーの発電量を抑える「出力制御」が初めて行われた。電気は使用量と発電量を一致させる必要があり、バランスが崩れると大規模停電が起こる可能性があるということで、やむなく行われたとのことだが、ある意味で天候任せで発電量がコントロールしにくいところがある、太陽光や風力のウィークポイントが露呈した格好となった。

その点、地熱発電はひとたび稼働すれば、他の再生可能エネルギーと比較しても安定した発電が可能とあって、その期待は今後さらに高まりそうな情勢だ。ましてや、火山大国かつ温泉大国である日本は、地熱に関してはアメリカ、インドネシアに次いで、世界で3番目に豊富な資源を有するとされているが、それをあまり生かし切れていないとの指摘も多い。それだけにSNS上で、国が率先して開発に関わっていくべきという声が多くあがるのも、当然の反応だと言えそうである。

Next: 「国をあげて取り組むべき国策だと」

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