目先円安が止まりません。4月26日現在為替は1ドル127円80銭台と円高水準をキープしています。この2ヶ月で約15円ほど円安が進んでおり、目下、輸入価格の上昇で企業・経済への影響が懸念されています。今回はそもそもなぜ円安が起こるのか?そして、この円安は経済にどのような影響を与えているのか?長期投資家である我々がどのような行動を取るべきか?くわしくわかりやすく説明します。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
なぜ円安が起こるのか
そもそも、なぜ円安がここまで進むのか?その原因は日米金利差にあると言われています。

出典: Tradingview
日本の金利は日本銀行の連続指値オペなど公的機関の強制的な金利調整の影響で、ほとんど金利変動がありません。一方、アメリカは急速なインフレの影響で利上げを進めています。
そのため単純に金利の高いドルに資金を預けていた方が利益を得やすいためドル買い円売りの動きが進み、ますます円安に拍車をかけています。
では、日本銀行のトップ、黒田総裁はどのような考えを持っているのでしょうか?3月22日の発言を見てみましょう。

このように黒田総裁は円安は日本経済に対してプラスであると言い続けています。
では、円安にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
円安の4つのメリット
円安のメリットは大きく4つあります。
1. 為替差益・金融所得
2. 輸出
3. インバウンド
4. 経済波及
それぞれ大事なポイントを説明します。
<円安のメリットその1:為替差益・金融所得>
これが一番わかりやすいです。 例えば1ドル=100円で米ドルを買ったとします。その後円安が進み1ドル=130円になったとすると30円の利益が出る。これが為替差益です。
現在は多くの会社が海外で子会社を設立したり、 私たち一般消費者も外国預金や外国株を持っていることが多くなったため、以前よりも金融所得のメリットが大きくなっています。
<円安のメリットその2:輸出>
日本で安い賃金・安い労働力で生産した商品を海外に輸出することで、外国通貨で商品が売れます。その際に円安が進むと円に換金した時、為替差益分が利益となり、輸出産業は利益が出ます。
<円安のメリットその3:インバウンド>
外国人からすると円安は少ない外貨でより多く円に交換できるため日本は安い国、バーゲンセールだ!というような感覚になります。過去には中国人による爆買いなどインバウンドが より明確になったこともありました。
<円安のメリットその4:経済波及>
前記の影響で利益を出した企業の従業員の給料が上がった場合、より消費が加速するため日本経済にもプラスの影響があると考えられます。
以上が、一般的に言われる円安のメリットです。しかし実際は、必ずしもプラスの効果が大きいとは言えません。これらの(1)から(4)は、主に高度経済成長期の時の話であり現在はそれぞれ影響が変化しています。
最も変化が大きいと言えるのは「輸出」です。
以下のグラフをご覧ください。

かつてはメイドインジャパンでブランドを確立していた製造業も、現在はその多くが海外で現地生産し海外で決済をしています。必ずしも輸出産業とは言えず円安のメリットを受けづらい経済環境となっています。
またインバウンドもコロナの影響で、もはやメリットをもたらしません。