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ファーウェイ復活か。米国に「消された」スマホ事業で反撃の狼煙、独自OSでiPhoneを時代遅れにする可能性=牧野武文

なぜファーウェイは制裁を受けることになったのか?

米国政府は、2019年度国防授権法に基づいて、米政府機関がファーウェイなどの製品を利用している企業との契約を禁止するという措置に出ました。ファーウェイ排除です。

その理由は、情報の安全保障の問題でした。ただし、日本で盛んに報道された「ファーウェイの機器がバックドアを通じて個人情報を収集し、中国に送っている」などと米政府は言っていません。

このような歪んだ報道に対して、ファーウェイジャパンは抗議声明を出しています。
※参考:日本経済新聞およびテレビ東京の報道に関する当社の見解(2019年1月16日配信)

このメルマガをお読みの方にとっては常識だと思いますが、スマホはそもそも個人情報を収集するデバイスです。アップルも個人情報を収集していますし、グーグルも個人情報を収集しています。スマホメーカーも個人情報を収集していますし、アプリも個人情報を集していますし、ファーウェイも当然個人情報を収集しています。しかし、それは使用前に明示的な断りがあり、多くの場合、サービスの利用改善に使われます。目的外の使用をしない限り、問題にする人はほとんどいません。

米国政府が問題にしていたのは、「ファーウェイは中国政府と密接な関係にある」という点です。

この密接な関係が何を表すのかまでは明言されていませんが、指摘をされているのは「中国インターネット安全法」の存在です。この28条は「ネットワークプロバイダは、公安機関及び国の安全機関のため法により国の安全及び犯罪捜査の活動を維持・保護し、技術サポート及び協力を提供しなければならない」となっています。

この訳はジェトロのものを引用させていただいていますが、ネットワークプロバイダーというのは「ネット運営者」のことで、ファーウェイなどテック企業のほとんどが該当をします。つまり、中国政府や関連機関が、国家安全や犯罪捜査を行うときは、テック企業はサポートして協力しなければならないというものです。

つまり、国家安全上の問題がある、日本や米国の個人が中国に対してテロを計画している疑いがあるので、ファーウェイが持っている外国人の個人情報を提出してほしいと要請をされたら、法律の文面上は、ファーウェイは個人情報を提供せざるを得ないのです。この構造が問題なのです。

日本を含めた民主的な国では、裁判所による令状が必要となり、裁判所が適法であるかどうかを判断するというプロセスがありますが、中国にはそれがなく、政府機関の思惑だけで個人情報を提出させることが可能な体制になっています。

ファーウェイの創業者、任正非(レン・ジャンフェイ)CEOは、この問題を指摘されて、「ファーウェイは個人情報を守る。政府から渡せと言われても渡さない」と答えていましたが、やはり無理があります。それはファーウェイが中国の法律を守らないと言っているのと同じだからです。任正非CEOの意図は、万が一そんな事態が起きても、ファーウェイは抵抗するということだと思うのですが、現実には難しいのではないかと思います。

ただ、この構造が問題であるというのであれば、中国製の電子機器、アプリのすべてにあてはまります。シャオミ、OPPO、vivoすべてそうですし、TikTokも問題になります。実際、TikTokは2020年8月に運営元の字節跳動(バイトダンス)との取引を禁する大統領令が出されました。

中国が先行する5G技術を止めるのが狙い

ファーウェイの問題もTikTokの問題も、中国では「酔翁の意は酒にあらず」という故事成語が使われました。酒に酔っている翁は酒ではなく、別の目的があるのだ、真意は別のところにあるのだという意味です。

ファーウェイの場合は、5G技術が先行をしているため、これをなんとか止めたいという意図があったと中国では解釈されています。また、TikTokについては、トランプ大統領の個人的な報復ではないかとも言われました。

本当かどうかはわからない話であり、完全な余談となるため、ご興味のある方は話半分でお楽しみください。

Next: どうやって事業を継続した?ファーウェイを窮地に追い込んだ禁輸措置

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