「Pasco」ブランドで知られる大手パンメーカーの敷島製パンが、東京都内の工場で製造した食パンの中からネズミの体の一部が見つかったとして、自主回収を行うと報じられたことが、大きな波紋を呼んでいるようだ。
回収されるのは、関東や東北などの1都14県で販売された、消費期限が今月7日から11日までの「超熟山型5枚スライス」と「超熟山型6枚スライス」で、対象となる個数は合わせて10万4,000個に及ぶという。
敷島製パンによれば、この商品を購入した消費者から「パンに異物が入っている」などと指摘があり、回収して調べたところ、食パンの中に大きさおよそ5センチ四方の黒い塊が発見され、それがネズミの体の一部だったと判明したとのこと。
8日正午までに健康被害などの訴えはないということだが、敷島製パンは「深く反省しています。徹底した再発防止策を実施してまいります」とコメントしているという。
昨今の“トレンド”通りに素早く事実公表も…
食品メーカーとしては、ある意味で避けては通れないリスクといった見方もできる食品への異物混入。
今年に入ってから発覚したケースだけでも、2月に崎陽軒の「昔ながらのシウマイ」にシリコンの一部が混入し、約2,200個の商品が回収されたほか、続く3月には551蓬莱の豚まんの材料に樹脂片が混入していたことが2日連続で発覚し、全61店舗と通販での販売を一時取りやめることに。
さらに同じく3月には、マルコメの「プラス糀 生みそ 糀美人」にゴキブリの一部が混入していたとして、出荷された約10万点を自主回収するという事態となるなど、まさに枚挙に暇がない状況だ。
ただここ近年では、こういった不祥事が判明した際にはすみやかに公表するというのが、“企業の透明性”といった面で逆に信用を得ることにもなるとあって、企業側の対応としてある種のトレンドとなっている状況。往生際悪く隠ぺい工作などを図れば、それらを含めてバレた際には、単なる異物混入沙汰以上に炎上してしまい、企業への信頼性が損なわれる可能性が高いというわけだ。
そんなこともあってか、今回の敷島製パンのケースも、5日に当該商品を購入した消費者からの指摘を受け、同7日付で同社公式サイトにお詫びと自主回収に関するお知らせを出したということで、大型連休中であったことを考えても、かなり迅速な対応となったという印象も。
しかしながら今回の件に関しては、敷島製パンが自ら潔く不手際を公表した……といったポジティブな受け止められ方は、あまりなされていない模様だ。
そこはやはり、先述のようなシリコンや樹脂片ならともかく、さらにはゴキブリといった昆虫類もギリギリで許容できるかも……といった反面で、やはりネズミの断片が混入、しかも5センチ四方といったしっかりとした塊で発見されたというのは、いくらなんでもエグすぎるというのもありそうだが、それ以上に尾を引いているのが、昨年春前頃に大きな話題となった“コオロギパン”騒動の影響だ。
無関係の会社の株価が下落するとばっちりも
2020年より敷島製パンのオンラインショップ限定・数量限定として販売されていた、食用コオロギパウダーを使用したシリーズ商品だったのだが、昆虫食に対する拒絶反応が世間で広まっていた昨年、その存在が急に槍玉にあがる事態に。
この騒動の影響で、コオロギパウダーを使用していない「超熟」などのPasco商品も、店頭などで売れ残っているといったことが、SNS上などで大いに取沙汰されたのだ。
もっとも食用コオロギパウダー入り商品に関しては、 SDGsや食糧不足対策の観点から、敷島製パン側も良かれと思い、そういう商品を企画したものの、昆虫食にアレルギーがある向きからすれば、ぶっちゃけ“異物混入”に他ならないということで炎上に至ったわけだが、今回本当の異物混入が露見したことで、昨年のその件も大いに蒸し返される格好に。
Pascoの看板商品である「超熟」といえば、小麦本来のおいしさを引き立たせたシンプルな味わいをアピールするための「余計なものは入れない。」とのキャッチコピーも周知されているが、実際のところはネズミにコオロギと、余計なものばっかり入っとるやないか……と、総ツッコミが入る事態となっているのだ。
しかも今回の報道を受け、航空測量や地理空間情報サービスの分野において国内最大手である「株式会社パスコ」の株価が、一時暴落するシーンもあった模様。
敷島製パン自体は非上場ということで、株価への影響などといったものは皆無だったわけだが、とはいえ今回のかなりエグすぎるネズミの混入にくわえ、先の“コオロギパン”の蒸し返しも相まって、ブランドイメージの失墜は避けられないといった状況だ。
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