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ファーウェイ復活か。米国に「消された」スマホ事業で反撃の狼煙、独自OSでiPhoneを時代遅れにする可能性=牧野武文

ファーウェイを深刻な事態に追い込んだ禁輸措置

ファーウェイの問題は深刻です。2019年5月には米商務省産業安全保障局(BIS)がファーウェイをエンティティリストに入れました。これは取引制限リストです。

米国企業は、このリストに登録されている企業とその企業と取引のある企業に、指定された技術を輸出、移転をする時は、あらかじめBISに申請をして許可を得る必要があります。事実上の禁輸措置で、規制というよりも制裁です。

これにより、グーグルはGooglePlayやGoogleMapなどのグーグルアプリ群=GMS(Google Mobile Services)のファーウェイへの提供を停止します。

ご存じのように、中国ではグーグルのサービスへのアクセスが許されていないため、中国向けスマホでは大きな問題になりません。元々、ファーウェイは独自のアプリストアなどのHMS(Huawei Mobile Services)を搭載し、EMUI(Emotion UI)と称して販売をしていました。

しかし、海外向けスマホでは問題が生じます。GooglePlayがないのですから、アプリを入れる方法がありません。ファーウェイのアプリストアは中国製アプリが中心となるため、海外在住の中国人ならともかく、私たち日本人も使いこなせなくなります。

さらに2020年8月には規制が強化され、携帯電話のチップも製造ができなくなりました。これがファーウェイにとって最大の問題です。

ファーウェイのスマホの革新技術は、独自開発のSoC(システムオンチップ)「麒麟」(Kirin)です。この性能が素晴らしいために、ファーウェイのスマホは性能の面で他社スマホを上回り、売れていたのです。Kirinは、ファーウェイ子会社の「海思」(ハイスー、ハイシリコン)が設計を行い、台湾の積体電路(TSMC)が製造をしていました。TSMCは最大の顧客がアップルで、アップルシリコンであるM1などを製造している非常に技術力の高い半導体メーカーです。

Kirinを製造するということは、ファーウェイ関連会社と取引があるということになり、TSMCは米国製の製造装置やソフトウェアを買うことができなくなります。実際問題として、半導体の生産ができなくなりますから、TSMCはKirinの製造をやめて、ファーウェイとの関係を切る必要が出てきました。

ファーウェイはしばらくはすでに納品されたチップを使ってスマホを製造できますが、それ以降どうするのか。中国の国内企業が半導体を生産することもできません。そこも米国の製造装置などを売ってくれなくなるのですから、立ち行かなくなります。アナリストが、ファーウェイはスマホ事業を放棄することになると予想するのも当然なのです。

しかし、ファーウェイはスマホ事業を継続しました。そして3ヶ月後に、独自OS「鴻蒙」(ホンモン、ハーモニーOS)を発表するのです。

なぜ、こんな短期間で独自OSを開発することができたのでしょうか。そしてチップはどうやって手に入れるのでしょうか。このハーモニーOSで、再びファーウェイは以前の座を取り戻すことができるのでしょうか。

Android端末はどう生まれる?

AndroidというOSは、その歴史から少し複雑な仕組みになっています。元々のAndroidは、オープンソースであるLinux(リナックス)をベースに開発が進められた携帯電話用OSです。オープンソースというのはソースコードを公開して、誰でも自由に使用ができ、誰でも開発に参加ができる仕組みです。多くの人の知恵と目を借りることで開発をするため、質の高い製品が生まれます。Linuxがオープンソースであるため、Androidもオープンソースになりました。この開発をおこなっていたのがAndroid社で、2005年にグーグルがこのAndroid社を買収し、開発が加速をします。

しかし、グーグルが開発をし、それを通常のソフトウェアと同じようにグーグルが所有をするというわけにはいきません。そこで、AOSP(Android Open Source Project)コミュニティーが立ち上がり、グーグルは開発した成果をこのAOSPに渡します。このAOSPのAndroidは今まで通りオープンソースとされ、誰でも自由に使用することができます。つまり、グーグルもオープンソースAndroidの開発に参加をする1メンバーとなったのです。

グーグルは、このAndroidに加えて、GooglePlayやGoogleMapといったグーグル開発のアプリ群GMS=Google Mobile Servicesを追加しました。GMSを搭載するにはグーグルと契約をして、1台あたり3ドル程度の使用料を支払う必要があります。GMSの契約をすると「Powerd by Android」のロゴが使用できるようになります。これが私たちがよく知っている「Android」になります。

一方、AOSPが管理をしているオープンソースのAndroidだけで、後は自社で改良をしたり、オリジナルのアプリ群をつけて製品化をすることもできます。この場合は、GMSの契約をしていないので「Powered by Android」のロゴを使うことはできませんし、一般的には「Android」とは呼ばれません。身近な例では、アマゾンが発売しているFireタブレットがその例で、「Android搭載」とは呼ばずに「FireOS」と呼んでいます。これは俗に「素のAndroid」「AOSP版Android」などとも呼ばれます。

中国では、ご存じの通り、グーグルのサービスが提供されていない/遮断されています。そのため、中国向けのスマホにとってGMSの契約をすることは意味がありません。

そこで、ほとんどの中国メーカーが、AOSP版Androidを使い、そこにオリジナルのインタフェースやアプリストアを中心としたアプリ群を追加し、オリジナルの名称をつけて販売をしています。ファーウェイの場合はEMUI(Emotion UI)という名前をつけています。

Androidを使えなくなったファーウェイ

しかし、国際版ではGMSは必須です。そこで、AOSP版AndroidにGMSの契約をし、「Android」として海外に販売しています。ファーウェイもこのような方式で国内版、国際版を展開していました。

ところが、米国政府の規制によりGMSの搭載ができなくなりました。国内版は今までと同じでも問題はないものの、国際版の販売には大きな障害になります。

ファーウェイとしては、海外の技術に頼るからこのような規制・制裁を受けるのだから、自分たちのオリジナルのOSの方が望ましいわけです。

そこで登場したのがハーモニーOSなのです。しかし、これだけの短期間で、OSの開発などできるものでしょうか。

Next: 制裁前から準備していた独自OS。ファーウェイ復活なるか?

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