海外投資家は中国を見放し始めている
ウクライナ戦争の戦況しだいで、中国が実質支援に踏み出さないという保証はどこにもない。習氏のイデオロギーに基づき一歩踏み出せば、「第二次制裁」は間違いない。
海外投資家は、この事態を最も恐れている。中国が、「第二次制裁」を受ければ、たちまち経済に混乱が起こる。株価も人民元相場も暴落すると読んでいる。海外投資家が、ここまで値下がりした中国株と人民元に投資しない理由は、「習近平リスク」を警戒している結果である。
外国人は、3月に中国の株・債券を合わせて175億ドルも売り越した。この売り越しが即、海外送金で中国から引き揚げられている。再度、タイミングを見て買い出動するチャンスを放棄したものである。
要するに、海外投資家は中国を見放し始めているのである。
消失した共同富裕論
中国の資産家は、習氏の「共同富裕論」に痛めつけられている。
過剰に保有する資産は、地方政府へ寄付せよと迫られているからだ。こうして、寄付が「第3の税源」とまで言われる時代になっている。直接税・間接税に次いで「寄付」が第3税源とされている。
このカラクリは、共産党富裕層へ不動産税を課せば猛反対を受けるので、企業経営がらみの資産家や企業をターゲットに寄付を強要していることにある。本来は、資本市場へ流れる資金が、寄付金となって地方政府の財源に化けているのだ。海外投資家が、こうして国内投資家に代わって中国資本市場を動かすキーになった。
共同富裕論は、21年の半ば頃から急速に脚光を浴びたが、今は誰も話題にしなくなっている。線香花火に終わった。
所得不平等の原因を断ち切らなければ、出生率低下に歯止めをかけられない。これが共同富裕論の発想原点である。それには、直接税(不動産税設定)を増やし、間接税(消費税)を減らすことが不可欠である。
こういう事実が分った結果、習氏は共産党古参幹部の子弟からの猛反対を受けて断念した。共産党の理想郷とされる「共同富裕論」は、共産党古参幹部の子弟によって葬り去られたのである。
習氏が、国家主席3期目を狙うには、正論も邪魔になって消え去る運命だ。何ともいかがわしい反対論である。