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なぜ中国はゼロコロナで自滅するのか。習近平「国家主席3期目」の野心で経済逆走、海外投資家が中国を見放し始めた=勝又壽良

5.5%成長「至上命令」

習氏は、自らの思想をイデオロギー化していることで、中国経済の根幹が大きく傷ついていることに気付かずにいる。

冒頭に掲げた2つの要因が、中国経済の潜在成長力を引き下げているにも関わらず、22年の経済成長目標5.5%前後を実現するよう指令を出している。具体的には、「米国のGDPを上回れ」と厳命している。

習氏は、4月末にいたるまでの数週間の会合で経済・金融担当の高官らに対し、経済の安定と成長を確保することの重要性を指摘してきたという。背景にあるのが、中国共産党による一党支配体制は、欧米の自由民主主義に代わる優れた選択肢であること。米国は、政治的にも経済的にも衰退していることを示すことができる、との考え方だ。

何とも滑稽な「イデオロギー」に取り憑かれたものだ。一党支配体制が、欧米の自由民主主義に代わる政治体制とは驚くものである。

ロシア軍は現在、ウクライナ侵攻において西側諸国40ヶ国の支援を受けたウクライナ軍と戦っている。習氏のイデオロギーによれば、ロシアの勝利間違いなしであろう。ロシアが敗北気配になったとき、一党支配体制の失敗を意味している。

中国の政府機関は、習氏の成長拡大を目指す号令に呼応し、大規模な建設事業を加速させる計画を検討しているという。製造業やテクノロジー、エネルギー、食品が重点分野とみなされている。個人消費の刺激に向けたクーポンの発行なども議題に上っている。

22年の政府目標成長率は、再三指摘するように5.5%前後である。海外の有力調査機関は、今年の成長率予測を相次いで下方修正した。IMF(国際通貨基金)は、今年1月に4.8%へ引き下げた。

これは、甘い予測の部類である。過半は4%前半へ引き下げている。ノムラは、3.8%と厳しい予測になった。4月のPMI(購買担当者景気指数)が、既述の通り50割れ状況にあり2ヶ月連続であることが背景だ。

こういう客観的な情勢悪化の中で、習氏は事務当局に対して、米国を上回る経済成長率を要求している。ある試算によれば、インフラ投資を18%増やせば、政府目標の5.5%前後を達成できるという。

果たして、これが実現可能であるか、である。

不動産バブルの崩壊で増やせぬインフラ投資

インフラ投資の過半は、地方政府が行なうものだ。問題は、その資金調達である。

地方政府は、不動産バブルの崩壊によって地価下落に見舞われている。これにより、すでに財源不足に陥っており、公務員の給与を3~4割カットしているほど。

米国の大手投資銀行ゴールドマン・サックスは昨年12月、住宅不況の影響について、次のように予測している。

1)土地販売額15%減・住宅価格5%減のケース → 22年のGDPを1.4%押し下げ
2)土地販売額30%減・住宅価格10%減のケース → 22年のGDPを4.1%押し下げ

(1)は、国有地の土地販売額が15%減となり、同時に住宅価格が5%減となれば、これだけで22年GDPを1.4%押し下げる。

(2)は、土地販売額30%減で住宅価格10%減となれば、22年のGDPが4.1%押し下げられる。

こういうケースを見れば、地方政府はインフラ投資を増やす余地のないことがわかるであろう。ここで指摘したいのは、中国が不動産バブルの崩壊した日本と同じ道を辿ることだ。

Next: 茨の道を進む中国。日本が経験した「不動産バブル崩壊」の二の舞に

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