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なぜ暗号資産「Terra/LUNA」は紙クズに?安定するはずのステーブルコインでいま起きていること。攻撃から暴落までの一部始終と今後の課題=山本仁実

ステーブルコイン「Terra」とは

韓国発のアルゴリズム型ステーブルコインプロジェクト Terra は、独自のブロックチェーン Terra Blockchain を開発し、その上でいくつかの通貨にペグしたステーブルコインを発行している。米ドルに対応した Terra USD や韓国ウォンに対応した Terra KRW が主要なステーブルコインとして扱われた。

このプロジェクトでは、ステーブルコイン発行に関する重要な意思決定を行ったり、プロジェクトから出た収益を分配するために、Luna というトークンも発行している。Luna トークンの保有者は、プロジェクトの成功に伴う Luna 価格の上昇を期待して保有するという位置づけだ。

Luna には重要な用途がある。それが、Terra ステーブルコインの価格調整だ。Terra のステーブルコインは、プログラムにより供給量をコントロールすることで、価格を制御している。

Terra USD の需要が上がり1ドル以上の価値がつきそうな場合には、Luna を焼却し Terra USD を追加発行することで価格を下げる。逆の場合は、Luna が追加発行され、Terra USD の価格を押し上げる。その過程で得られる通貨発行益は、Luna 保有者に還元される仕組みが組み込まれた。

ここまでだけでも相当に挑戦的なプロジェクトであるが、Terra は DeFi ブームに乗っかり、さらなる挑戦を仕掛けた。

せっかく発行されたステーブルコインも、使われなければ経済圏は拡大しない。それでは Luna 保有者が儲からず、それはすなわち Luna 価格の上昇につながらず、よって Terra ステーブルコインの発行規模を拡大できない。

そこで、ステーブルコイン決済がモバイル決済にも使えるようになる決済プラットフォームを開発したり、米国株などの現実資産をトークン化した株式連動型トークンのような金融商品も開発した。極めつけは、Anchor というセービングプロトコルで、これは預け入れた Terra ステーブルコインに金利を付ける商品だ。年利20%を謳い、投資家を惹きつけた。

投資家からすれば、例えばこんなシナリオが考えられた。

1. Luna を保有する
2. Luna 価格が上昇して含み益が出る
3. Luna から Terra USD ステーブルコインに換金して Anchor に預け入れる
4. すると実質ドル建ての預金で年利20%の金利報酬が得られる

そして、みんなが欲しがり Luna の価格がさらに上昇する仕組みである。Luna 価格が上昇すれば、Terra USD の経済規模も同時に拡大することになり、またまた Luna 価格が上昇する。1に戻る。

これ以外にも Luna を増やす方法は複数存在するが、要するに短期間で様々な方法を使ってこのプロジェクトから利益を出す投資家が生まれた。そしてその膨れ上がった資産は、さらなく Terra ステーブルコイン発行の信用を創造し、経済規模を拡大していった。まさに、ひとつの国家が誕生するような光景が広まったわけだ。

そして当然に、短期間で Luna トークンの価値は急上昇した。正の連鎖が続き、ハイレバレッジのまま時価総額が拡大していったのだ。

確かに、Luna の価格上昇が前提であれば、非常によくできた設計と言える。しかし脆さを指摘する声も上がりはじめ、Terra の短期間での急成長は一瞬で崩壊することになった。

Next: きっかけは攻撃。Terra と Luna が崩壊した理由とその後

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