いま日本の主要メディアでは、ウクライナへの兵器の支援さえあれば反転攻勢は可能で、最終的にはウクライナは戦争に勝利するとの報道が多い。しかし、欧米の武器供給の能力から見ると、これはかなり厳しいと言わねばならない。おそらくウクライナは負ける。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)
※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2022年7月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
欧米の武器支援は可能なのか?
日本や欧米の主要メディアの報道では、欧米からの重火器を中心とする武器支援が継続すると、いずれはウクライナは反転攻勢してロシア軍に勝利するだろうという観測が、いまだに多い。
しかし、その欧米の武器支援の継続がどこまで可能なのか疑念が出てきた。
グローバルなサプライチェーンの寸断からIT機器や部品の入手が難しくなっており、これがウクライナへの武器支援の継続を困難にする可能性があるというのだ。
直近の戦況
まずは兵器の供給問題を書く前に、最新の戦況を確認しておきたい。香港の有力紙、「アジア・タイムス」が掲載しているもっとも客観性の高い戦況分析だ。要点だけを伝える。
東部ルガンスク、リシチャンスクの戦いは、セベロドネツクでの非常にゆっくりとした戦いに比べ、ロシアに有利な展開となっている。
またもや遅々として進まない包囲戦は、ロシアに大きく有利に働くだろう。ウクライナ軍は機動力とイニシアチブを取り戻し、補給線を再開するか、部隊を撤退させ、塹壕を崩し、より防御しやすい周辺に撤退する方法を見つける選択が迫られている。
ウクライナへの新兵器の供与が流れを変えるという希望は見当違いである。そのような兵器の登場によって、より強固な防衛線からの反撃が可能になるかもしれないが、新兵器が無計画に導入された場合には、再び敗北と士気の喪失につながるだけかもしれない。
しかし、冬までにウクライナ軍が勝利を収め、失われた地盤を回復して戦争を終結させるというゼレンスキーの話は、どう考えても無理があるように思える。ゼレンスキーがそのような話をするのは理解できるが、現実的とはほど遠い。
このような話や、西側からの「ゲームチェンジャー」兵器システムの到着に期待を寄せるのとは裏腹に、兵士を含む大量のマンパワーの損失が、ウクライナの戦場での主要な問題である。
12基の最新型多連装ロケットシステム(MLRS)が、今後数カ月の間に米国、英国、ドイツから提供される予定である。米国とドイツはさらに榴弾砲も送る予定だ。だが、ウクライナにはそれらを発射するのに十分な経験豊富な兵士が必要だ。
このように、ウクライナ軍の劣勢は続いている。「アジア・タイムス」の戦況分析では、たとえこれから最先端の兵器の供給があったとしても、訓練された兵士を含むマンパワーの決定的な不足から兵器を活用できず、戦況を変えることにはならない。ゼレンスキーは冬になる前に戦争に決着をつけたいと言っているが、これは実質的に不可能な状況だ。
しかしながら、こうしたウクライナのマンパワー不足だけではなく、欧米による武器支援の継続そのものが困難ではないかという見方も強くなっている。