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嘘だった「武器支援でウクライナ反転攻勢は可能」との報道。西側の武器供給が止まる2つの理由=高島康司

武器供給の困難性

いまアメリカは、スティンガーとジャベリンを除けば、155mm榴弾砲18基と3万6,000発の弾薬、ハープーン沿岸防衛システム2基、ウクライナ軍用の暗視装置数千個と不明数の熱画像装置、安全無線数千個、スイッチブレード無人機700機、ケブラーヘルメット付き防弾着7万5,000セット、化学バイオ防衛装置など多くを供与してきた。

さらに米議会は最近、400億ドルのウクライナ補足歳出法を可決し、大統領が署名した。この歳出法は、ウクライナへの武器と人道的物資のためにさらに140億ドルを供与するものである。

このように、ウクライナへの手厚い武器支援は続いてるものの、どれだけ支援しても足りず、まさにブラックホールのような状態だと形容されてもいる。

しかしアメリカでは、「レイセオン」や「ロッキード」などの大手防衛企業が、軍への補給に深刻な困難に直面している。アメリカではすでに戦時在庫の3分の1以上のスティンガーとジャベリンミサイルをウクライナに送っている。戦争が続けば、これらの兵器の在庫の半分も消費されると見られている。

だが、軍需企業に新しい装備を発注しても、新兵器の生産には長い時間がかかる。そのため、戦争が長期化して武器への需要がさらに増大し、在庫が不足した場合、軍需企業はおそらく需要には追いつけない。装備の不足は、たとえ支援を続ける意志があったとしても、武器の生産には数年はかかる。たしかにヨーロッパ諸国の政府のなかには、防衛費を増額しているところもある。しかし、ヨーロッパでの武器製造は、アメリカの非常に長い生産時間と比較しても、もっと時間がかかる。年単である。

たとえば米ミサイル製造大手の「レイセオン」はスティンガーミサイルの再補充のために6億3400万ドルの新たな契約を得た。だが、「レイセオン」は来年までに生産を着手することは不可能だとしている。

また、英国国防幕僚長のトニー・ラドキン提督は、貴族院国際防衛委員会で、「近代的な兵器を迅速に生産することはできないので、我々は年単位で話をしているのです。確かに砲弾や大砲を生産することはできますが、超高級品でなくても、NLAW(対戦車ミサイル)兵器のような控えめなものでも、元の在庫に戻すには数年かかるのです」と証言している。

兵器生産の困難性、軍需産業独自の問題

このように、欧米からウクライナに向けての武器支援はいまは辛うじて維持されているが、戦争が長引くと在庫の減少と兵器製造の時間的な長さから、支援の継続は困難になる可能性が高い。

そうなると、ウクライナはかなり悲惨な状況に追い込まれる。兵士を含む絶対的なマンパワーが不足に加え、期待していた欧米からの十分な武器支援も乏しくなる。

このような状況では、ウクライナは戦闘の継続が困難な状態に追い込まれることま間違いない。

軍産複合体が中核の「外交問題評議会(CFR)」の影響力の強い米バイデン政権は、ウクライナ支援を続けて戦争を長期化させ、ロシアの弱体化をねらっている。1979年に始まったアフガン戦争はソビエト経済を弱体化してソビエト崩壊の背景になったが、今度はロシアを弱くするためにウクライナを使っている。しかし、マンパワーも決定的に不足し、さらに武器の継続的な支援も期待できないとしたら、ウクライナは長期戦を戦えないことになる。バイデン政権のロシア弱体化のシナリオは実現不可能だ。

しかし、それにしても、なぜ兵器の生産に時間がかかるようになったのだろうか?

これにはいくつか理由がある。ひとつは、軍需産業独自の問題である。アメリカとヨーロッパにおける防衛用品の調達は、継続的ではなく、単発的である。ある一定量の防衛装備品を購入するために資金が配分される。契約が完了し、すぐに次の購入がない場合、生産ラインは停止され、第2、第3層の部品サプライヤーも生産を停止するか、他のプロジェクトにシフトする。場合によっては廃業してしまう。

このため、兵器の在庫がなくなり、後で新たな注文が入った場合、サプライヤーネットワークや生産ラインをほぼゼロから立ち上げなければならなくなる。ある種の兵器のためのインフラが失われることに加え、熟練した工場労働者やエンジニアがいなくなったことも関連している。

Next: 西側諸国は支援できる状況にない?窮地に立つウクライナ

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