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「インフレ軟化=株価上昇」を疑え。7月100bp米利上げ観測の高まりで警戒すべきこと=脇田栄一

13日公表の米CPIは前年同期比で市場予想を上回る9%超(9.06%)となった。前月比でも1.3%と急伸している。これによってFOMCの7月会合では100bp引き上げの声もでてきたが、イレギュラーな利上げ幅がインフレ抑制に効果があるのかは未だに定かではないし、おそらく「効果薄」といったところだろう。リセッションありきのインフレ軟化となる可能性もあり、インフレ軟化=株式上昇とは「ならない」ことすら彷彿させる。

プロフィール:脇田栄一(わきた えいいち)
FRBウォッチャー、レポートストラテジスト。1973年生、福岡県出身。個人投資家を経て東京都内の大手株式ファンドでトレードを指南。本来は企業業績を中心とした分析を行っていたが、08年のリーマンショックを経験し、マクロ経済、先進国中央銀行の金融政策の影響力を痛感。その後、FRBやECBの金融政策を先読み・分析し、マーケット情報をレポートで提供するといった業態を確立。2011年にeリサーチ&コンサルティング(現eリサーチ&インベストメント)を起業。顧客は機関、個人投資家、輸出入企業と幅広い。

7月100bp利上げ観測も、インフレには「効果薄」か

13日公表の米CPIは前年同期比で市場予想を上回る9%超(9.06%)となった。前月比でも1.3%と急伸している。ザックリいってしまえばマーケットにとってはこれがすべて。 CPIコアもいれれば軟化したのは前年比だけである。

これによって7月会合では100bp引き上げの声もでてきたが、イレギュラーな利上げ幅がインフレ抑制に効果があるのかは未だに定かではないし、おそらく「効果薄」といったところだろう。

現在の金融政策というより金利政策では、このインフレを抑制するとは思えない。

よって、金融政策で物価高を抑え込むには(6月QTよりから減額幅が大きくなる)9月QT(量的政策)に懸けるしかないわけだが、過剰流動性を急ピッチで引き上げたとしてマーケットには打撃になる。

この先も険しい相場が続く

これは余談になるが、「いつ資産運用、株式投資をはじめればいいのか?」という声は業務上訊かれることが多い。これはファンダメンタルやテクニカルの問題ではなくタイミングの問題である。

11月の中間選挙にて共和党が大勝すればウクライナに対する武器供与も減額されることが予想され、プーチンもそれに期待している。ロシア・ウクライナ情勢の変化でパッと思いつくのはそのあたりくらいで、今年のマーケットにおけるテーマは絞られているものの、険しい相場は先述の9月QT含めまだまだ継続するだろう。

CPIの結果によって6月3週はフリーフォール懸念が発生、前年同月比8.58%増もさることながら、直近の1%超(前月比)は強烈なネガティブサプライズになった。

この結果、15日の議長会見は一層のタカ派色が強まることになる、逆風続きのハイテク(ナスダック)に至っては反発の道が閉ざされたように、感じなくもない。繰り返しお伝えしてきた最強物価高の高止まり懸念である。(局所抜粋)

※参考:続・6月FOMC前夜 ‐上振れCPIに潰される米株の道のり – ニューノーマルの理(2022年6月11日配信)

上記のように、今年の相場は5月CPIで決まった感は否めない。賢明な方であれば発表と同時にそれを直感したものと思われる。

明るい材料(と思いたい)のは、中間選挙による共和党勝利、9月QTによるコモディティ市場からの過剰流動性引き上げくらいしか思いつかないが、量的政策に関しては株式にとっても軟化要因になる可能性高く、そういう中で各々が戦略を構築するしかない。

インフレ軟化=株式上昇とは「ならない」懸念も

ちなみに先日公表された住宅着工件数も5月は急減速した。30年固定金利が5%に到達するという流れの中での結果だった。その後、6%に迫る勢いもみせた住宅ローン金利を見る限り、さらに住宅着工は減速することだろう。

その流れで家電・家具・自動車と勢いが頓挫すればリセッションありきのインフレ軟化になる可能性あり、インフレ軟化=株式上昇でないことすら彷彿させる。

みなさんご存じの通り、個人的には10年-2年はリセッションの兆候としてみていないが、今現在マイナス圏を深堀している状態である。信ぴょう性の高い代表的な逆イールド(3ヵ月-10年 ※拙著『為替の基本とカラクリがよ〜くわかる本[第2版]』参照)はプラス圏を保っているが100bpの話題がでてきた現在、マイナス圏を深堀していくことは十分考えられる。

image by:Noska Photo / Shutterstock.com

本記事は脇田栄一氏のブログ「ニューノーマルの理(ことわり)」からの提供記事です。
※タイトル・リード・見出しはMONEY VOICE編集部による

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