米国は2四半期連続で実質GDPがマイナス成長となり、テクニカルリセッション(景気後退)と見なされる段階に入った。それでも雇用環境の堅調さを理由に、リセッション入りを否定する声は多い。バイデン大統領も否定しているが、中間選挙を控えて認めたくないだけのように見える。(『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』澤田聖陽)
※本記事は有料メルマガ『元証券会社社長・澤田聖陽が教える「投資に勝つニュースの読み方」』2022年8月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:澤田聖陽(さわだ きよはる)
政治経済アナリスト。国際証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)、松井証券を経て、ジャフコ、極東証券にて投資業務、投資銀行業務に従事。2013年にSAMURAI証券(旧AIP証券)の代表に就任。投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ拡大させる。現在は、澤田コンサルティング事務所の代表として、コンサルティング事業を展開中。YouTubeチャンネルにて時事ニュース解説と株価見通しを発信している。
投資に勝つにはまず第一に情報分析。「投資に勝つ」という視点から日常のニュースをどのように読むべきかを、この記事の著者で、元証券会社社長で現在も投資の現場の最前線にいる澤田聖陽氏が解説します。視聴方法はこちらから。
米国経済はリセッションに陥っているのか?
米国の第2四半期(4~6月期)の実質国内総生産(GDP)速報値は、年率換算で前期比0.9%減となり、第1四半期が年率換算で前期比1.6%減であったので、2四半期連続でマイナスとなった。
2四半期連続で実質GDPがマイナス成長になると、自動的に「テクニカルリセッション」と見なされる。
ただし、米国が本当にリセッション(景気後退)に入ったかどうかは、意見が分かれているが、現状ではリセッションには陥っていないとする声が多いように思う。
否定派が根拠とするのは、雇用環境の堅調さである。
米国は深刻な人手不足によって労働市場は逼迫し、6月の賃金上昇率は前年同月比51%増と、賃金上昇率も未だ高い状況である。
また同じく6月の失業率は3.6%と史上最も低い水準にあり、このような労働市場の状況を鑑みると、リセッションに陥ったとは言えないというのが、否定派の意見である。
労働市場を見ても景気の実態はわからない
個人的には、現在の労働市場の状況はかなり歪められたものであると考えていて、労働市場の数字を根拠として、現状がリセッションでないとする結論付けるのは、少し説得力に欠けるような気がしている。
かなり歪められたものと表現したが、現在の労働市場の逼迫にはアフターコロナの特別な状況が寄与している。
バイデン政権はコロナ対策で「アメリカン・レスキュー・プラン(米国救済計画)」と称して、約200兆円を給付金等で配るなど大盤振る舞いした。
また失業給付金についても、2021年9月までは通常の失業保険の給付に加えて週600ドルを加算して支給していた。
出業給付金の加算処置は昨年の9月で終了したわけだが、その後も労働者が求職しないという現象が起こっている。
正確に言うと、労働者がコロナ前の働き方を拒否していると言える
働く意思がない人(求職をしない人)が増えることによって、失業率を計算する分母となる労働力人口が減少することで、失業率が低く算出されるという現象が起きている。
逆に言えば、現在求職していない人が労働市場に戻ってくれば失業率は上昇するわけだが、今のところそのような動きは見られない。
コロナで労働者の「働く」ということに対しての考え方が変わってしまったということなのだろう。
このような現象は労働市場の逼迫と賃金上昇を招き、賃金上昇コストが価格に上乗せされることによって、よりインフレを深刻化させるという負のサイクルに陥っているのが、米国の現状であると考える。