国民負担率の推移
図56の上の表は、1970年から10年毎の社会保障給付費の推移と、その内訳の金額と全体に占める割合の推移、そして国民所得額を比較した国民負担の推移を%で分かるように表示している。
下のグラフは1950年からの社会保障費総額と、年金、医療などといった内訳の推移を左目盛で、1人当たりの社会保障給付費を右目盛で示している。国民1人当たりの社会保障給付費は2015年に90万円に達したことが分かる。
まず、最上段の国民所得額は最初の10年間で2.34倍になった。次いで、70.1%増、11.3%増、6.2%減と推移した。これはこれまで見てきた消費税導入までの経済の高成長、導入後の減速、税率引上げ後のマイナス成長と一致する。直近の8年間は14.4%増となっているが、2020年は減少する見込みなので、10年間ではこの数値には届かない見込みだ。
一方で、給付費の方はどの項目もコンスタントに増え続けているので、国民の負担率は5.77%から、12.15%、13.67%、20.31%、29.11%、29.29%と上がり続けてきた。最後の8年間の増加率は前の20年に比べると緩いが、2020年までの10年間ではもっと上がる見通しだ。
これらが示唆しているのは、社会保障制度を維持するために、国の負担は2018年時点で総税収の54.6%に増え、国民の負担も29.3%と増え続けていることだ。セイフティーネットであるはずの社会保障制度が重過ぎて、財政も家計も押し潰しかねないところまで来ていることだ。
加えて、コロナ禍とその対策禍による景気悪化で、所得額が減り、給付費が増えると見込まれるので、国民の負担率がさらに上昇すると見込まれることだ。
そして、それが個人消費減退に繋がり、景気をさらに悪化させることになることだ。
日本経済のピークは1997年。そこからまるで成長していない
何度も繰り返しているが、日本の経済規模(名目GDP)は1997年度にピークを付けた。2016年度には計算方法の見直しでピークを更新し、2019年度までは伸びていたが、2019年10月の消費増税以降は11四半期連続の需要減で、今は1997年度を下回っている。
日本経済の停滞を1998年にピークを付け減少に転じた労働人口に原因を求める人たちがいるが、私は賛同できない。なぜなら、その頃から失業率が上昇し続け、非正規雇用の割合が増え続け、賃金が下がり続けたからだ。労働力が足りないことと、そうした労働市場の全面的な悪化とは整合性を持たない。
コロナ禍がその前から始まっていた日本経済の停滞を隠したように、非業の死が日本経済のファンダメンタルズをボロボロにした安倍元首相を国葬に値するとしたように、少子高齢化を世界経済の成長から日本だけが取り残された理由だとしているのだ。どれも、拙著で取り上げたようなデータを無視したものだ。