住宅の購入を考えている人は、物件の販売価格を見て、自分が払えるかどうかで決めていると思いますが、本当にその物件は、それだけの価値があるのでしょうか?35歳、Mさんの土地付き住宅購入の方法を例にとり、物件の本来の価値を知る方法を解説します。(『【人生の添乗員(R)】からのワンポイントメッセージ』牧野寿和)
ファイナンシャルプランナー、牧野FP事務所代表。「人生の添乗員(R)」を名乗り、住宅取得計画やローンプラン、相続などの相談業務のほか、不動産投資、賃貸経営のアドバイスなども行う。著書に『銀行も不動産屋も絶対教えてくれない! 頭金ゼロでムリなく家を買う方法』(河出書房新社)など。
Mさん(35歳)の土地付き住宅購入方法は?
土地付きの新築の戸建て住宅が、3,500万円で販売されていたとします。Mさんとその家族は、この住宅の立地や間取りも気に入り、
(1)すべて自己資金
(2)一部自己資金、残り住宅ローン
(3)すべて住宅ローン
といった3つの方法で購入する検討をしています。
そこで今回は、上記(1)(2)(3)の方法で、購入を検討するときMさんは、どんなところを確認していったのか、その方法を見ていきます。
なお、購入希望の住宅は3,500万円です。
住宅ローン商品の内容は、
◎ 全期間固定ローン
◎ 返済期間35年
◎ 金利年1.5%
借入金額などの住宅ローンの詳細は、このあとの記事ごとに明示いたします。
また、この記事では、住宅購入や住宅ローンの契約に関係する、諸費用や諸税については除いて記述しています。
現在、Mさんは35歳の会社員です。パート勤めの奥さんと中学1年生(13歳)と小学校2年(8歳)の子どもの4人家族です。
今住んでいる賃貸マンションの近くで、数件、Mさん夫婦の希望に叶うような新築戸建て物件を見つけ、そのうちの1軒に決めたところです。
なお、住宅購入の頭金として800万円くらいは、Mさん夫妻の貯蓄で用意できるとのことです。
また、両親からの資金援助や生前贈与、それに夫婦の貯蓄で3,500万円準備することは可能です。しかし、現実的ではないとのことです。
(1)すべて自己資金で購入
3,500万円の住宅物件を、3,500万円現金で購入すれば、当たり前のことですが、物件の購入価格は、3,500万円です。
ただし、前項に記述したように、現在のMさんは、3,500万円の現金は持っていません。
しかし、Mさん夫妻の両親からの資金援助や生前贈与をしてもらえば、現金で住宅購入資金は準備できるようです。
ただ、少なくとも、Mさんの両親の老後生活資金や相続(生前贈与)といった問題が解決してから、住宅購入資金は両親から手元に届く訳です。したがって、相当時間がかかり、Mさんの住宅購入には間に合わないでしょう。
また、Mさんが、たとえ現金で購入できる環境にあっても、現金で購入すれば、その分、手持ちのまとまった現金がなくなることを考慮すべきことです。
(2)一部自己資金、残り住宅ローンで購入
次に、一部は自己資金で、残りを住宅ローンで返済していく方法です。
自己資金は、頭金や建売住宅を購入するハウスメーカーへの、この物件の購入契約の手付け金として、現金での支払いが必要になるときに使います。
3,500万円の物件のうち800万円は、現金で支払い、残りの2,700万円を、上記記載の住宅ローン条件で購入するとします。
すると、ローン電卓で計算してみると、
・毎月の返済額82,670円
・返済利息総額772万1,315円
・返済総額3,472万1,315円
となります。
実際のMさんのこの住宅の購入価格は、800万円(現金支払い分)+3,472万1,315円(住宅ローン返済総額))=4,272万1,315円となります。
Mさんは、3,500万円ではなく、利息分772万1,315円高い「4,272万1,315円」の物件を買ったことになります。
(3)すべて住宅ローンで購入
また、3,500万円の住宅購入金額の全額を借入れる(フルローンといいます)と、上記と同じ条件で、
・毎月の返済額107,165円
・返済利息総額1,000万9,113円
・返済総額4,500万9,113円
と計算でき、3,500万の物件でも、4,500万9113円、利息分の1,000万9,113円分、購入価格が上昇します。
したがって、同じ3,500万円の物件でも、
(1)3,500万円
(2)4,272万1,315円
(3)4,500万9,113円
と購入価格は、利息を支払う分高くなります。
しかし、購入資金を借り入れて住宅ローンで返済する期間、手持ちの資金は、住宅ローンの返済のほか、子ども教育資金などに使うことができます。ここは、カードローンなどよりはるかに金利が低い、住宅ローンを有効利用すると考えてもいいかもしれません。
なお、フルローンで住宅ローンを借りられる物件について、融資をする側の金融機関などは、万が一その物件を売却する価格、つまり資産価値を査定して、その金額まで融資をしてくれるということです。
言い換えれば、記事の中の物件は、あくまで「3,500万円の価値はある」住宅といえます。
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