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2023年、スマホはこう進化する。急速10分充電、折りたたみ大画面、中国産半導体でファーウェイ復活ほかトレンド最新予測=牧野武文

世間では、スマホの進化は止まったと言われていますが、それは大きな間違いです。2023年には世界が仰天するようなスマホの進化が花開く年となるかもしれません。今回は2023年に大きな話題となるスマホの最新トレンドをお伝えします。(『 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2023年1月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

2023年世間を騒がすスマホのトレンド

今回は、2023年に話題になりそうなスマートフォン関連のテクノロジーをご紹介します。

「スマホの進化は止まった」「スマホは成熟をした」「スティーブ・ジョブズ亡き後のiPhoneにはサプライズがない」という話はよく耳にします。確かにこの数年のスマホにはサプライズがなく、進化が止まってしまったかのように見えます。

しかし、それは「わかりやすい進化がなくなった」というだけのことにすぎません。スマホが登場した頃、ディスプレイの解像度は低く、カメラの解像度も低いものでした。肉眼で見ても、ジャギーがわかるほどでした。

例えば、2007年1月に発表された初代iPhoneのディスプレイは320×480ピクセルで、カメラ解像度は2メガピクセルでした。しかし、最新のiPhone14では、ディスプレイが1179×2532ピクセルとなり、カメラ解像度は12メガピクセルになっています。このような進化は目で見て感じることができるため、わかりやすいのです。

しかし、2010年台半ばからは、一見わかりづらくても、大きな進化が起きています。例えば、アップルは2017年からFaceIDを搭載しています。いわゆる顔認証です。これは顔の位置を検出する顔検出ではなく、顔データを使って本人認証をするのですから、相当に重たい演算が必要になります。このため、iPhone Xが採用したSoC「A11」にはNPU(Neural Porocessing Unit=ニューラルエンジン)が搭載されています。いわゆるディープラーニング演算に特化した演算ユニットで、FaceIDを実現するにはこのニューラルエンジンが必要でした。

FaceIDは、ユーザーから見たら、重たい演算が必要な機能には見えません。顔を見せればロック解除ができたり、決済の認証ができるだけだからです。しかし、その背後では膨大な演算が必要で、それを実現するためにSoCを大幅に進化させる必要があったのです。

さらに、写真をきれいに撮るということにもニューラルエンジンは使われています。現在のスマホはカメラレンズが複数ついているのが当たり前になりました。これにより写真が格段に美しくなります。例えば、夜景を撮影した場合、光の量が少なすぎて、どうしても電気的なノイズが画像に乗ってしまいます。しかし、複数のカメラで同じものを複数枚撮影しているのですから、ノイズを判別して、その部分に関しては他の写真を参照し、ノイズのない情報を合成してやればノイズが消えます。これにも、ノイズの判別や自然な合成など膨大な演算が必要になります。

また、今のスマホは一眼レフカメラのように、被写体にピントを合わせて、背景をぼかすことが可能です。これも複数のカメラで同時に撮影することにより、立体視ができるので、被写体の距離を判断して、背景をぼかすという処理を行います。これにも膨大な演算が必要です。

このように、最近の進化は、気がつかない部分で進化をしているということが多くなっています。このような進化をさせるため、ハードウェアを進化させるというのが現在のスマホ進化の主流になっています。

今回は、今年2023年に起こる可能性のあるスマホの新しいテクノロジーについてご紹介します。

2023年スマホ界隈で最大の話題とは?

2023年、スマートフォン界隈で最も大きな話題になるのは、iPhone15に搭載されるA17チップになるでしょう。なぜなら、世界で最初の3nm(ナノメートル)プロセスで量産されたチップになるからです。アップルは公式発表をしていませんが、業界ではほぼ確定的な事実だと認識されています。

昨年12月29日に台湾積体電路(TSMC=Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)が台南市のテックパークに18棟の工場をオープンしました。この工場群では5nmと3nmのSoCが生産されることになっていて、第5工場から第9工場までに3nm生産の製造装置が配備されています。

一方、Androidのフラグシップチップであるクアルコムのスナップドラゴン8 Gen3も3nmプロセスで生産されるとの見通しがありましたが、TSMCで製造をするのかサムスンで製造するのかが揺れていました。クアルコムは今までサムスンでチップを製造していましたが、2022年5月に発表したスナップドラゴン8+で、製造委託先をTSMCに変更をしたため、TSMCで3nmSoCを製造することになると見られていました。

しかし、TSMCも3nmプロセスに対応した工場が無限にあるわけではありません。台南の工場をアップルが取るか、クアルコムが取るかが注目されていて、確定情報ではありませんが、アップルが勝ち取ったようです。このため、クアルコムの3nmSoCの製造は2024年からになると見られています。

また、サムスンも独自に3nmSoCの製造を始めると見られています。2023年は「3nm」という言葉がキーワードとして世の中を賑わせることになりそうです。

3nmという言葉になじみがない方も多いかと思いますが、これはスマートフォンやPCの頭脳であるSoCの中の回路の細さのことです。以前はCPUと呼んでいましたが、今では演算だけでなく、画像処理やAI処理など複数の回路を組み込んだ半導体となり、SoC(System on Chip)と呼ばれるのが一般的になっていますが、スマホの頭脳であることは変わりありません。

この回路が細いということは、チップそのものを小さくする(あるいは集積度をあげる)ことができ、小さくすると電子が走る距離が短くて済むので処理速度があがり、なおかつ電力消費が少なくなります。欠点としては放熱処理が難しくなります。

iPhone15は、このA17チップにより、処理性能の点で、Android陣営に大きく差をつけることができるようになります。

Next: 中国産半導体でファーウェイが復活

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