fbpx

2023年、スマホはこう進化する。急速10分充電、折りたたみ大画面、中国産半導体でファーウェイ復活ほかトレンド最新予測=牧野武文

「スマホの性能向上は要らない」の大きな誤り

よく、「スマホの性能向上はもうじゅうぶんであり、ゲームのヘビーユーザーでもない限り、誰も気にしていない」という人がいますが、そんなことはありません。むしろ、以前よりもスマホの性能向上に対する要求は高くなっています。

例えば、多くの人が今ではZoomなどのビデオ会議システムをお使いだと思います。自宅から使う場合は、生活感のある背景を消すために、背景をぼかしたり、画像を背景に使ったりすることも多いかと思います。しかし、古いPCをお使いの場合は、この背景効果が使えないことも多々あります。なぜなら、この背景効果はかなり重たい演算になるからです。人物の範囲を確定するのがなかなか大変な計算で、しかも、これをリアルタイムでこなさなければなりません。

また、自撮り動画を撮る場合に、顔に追従するスタンプを使ったり、特殊効果をかけることも多いかと思いますが、これもかなり重い演算です。一度保存しておいて、後で特殊効果を載せるのであれば時間をかければ可能ですが、リアルタイムで効果をかけるというのはかなりたいへんな作業です。

スマホは、今や、このような重たい演算をリアルタイムにこなすようになり、それが求められるようになっています。このような要求に応えるには、SoCの進化がどうしても必要になるのです。<中略>

中国産半導体でファーウェイが復活

2023年は、ファーウェイのSoC「麒麟」(Kirin)が戻ってくる年になるかもしれません。

ファーウェイはKirinというSoCを生産していました。子会社の海思(ハイスー、HiSilicon)が設計をし、台湾のTSMCが生産をしていました。しかし、ご承知の通り、米国のデカップリング政策の一環で、Kirinの生産ができないという事態に陥っていました。ファーウェイのSoCを生産する企業には、米国製の製造装置、製造ソフトウェアを輸出しないという政策を打ち出したのです。

TSMCは、そんなことをされたら半導体製造ができなくなってしまうため、Kirinの生産を中止しました。中国にTSMCほどの高い技術を持っている半導体製造企業はなく、ファーウェイはKirinを調達することができなくなってしまいました。KirinはアップルのiPhoneに使われているAシリーズと双璧をなす性能の高さで、ファーウェイの重要技術でした。

それが調達できなくなったファーウェイは、当面は在庫をしているKirinを使ったり、代替品としてクアルコムのスナップドラゴンを調達して、スマホを生産していました。しかし、その出荷量は大幅に減り、しかも調達できるクアルコムのSoCは5G未対応のものです。ファーウェイは5G技術のリーダーでありながら、5G対応のスマホが発売できないという状況に陥りました。

ファーウェイの隘路としては、Kirinを米国の製造装置を使わない中国の半導体製造企業につくらせる「純国産化」しかありません。しかし、半導体製造の技術が遅れている中国が、Kirinクラスの半導体を製造できるようになるにはかなりの時間がかかると見られていました。

しかし、昨年の暮あたりから、ファーウェイの幹部から「Kirinはいつ戻ってくるのか?」という問いに対し、否定をしない返答が戻ってくるようになり、さらにSNS「微博」(ウェイボー)のKirin公式アカウントが動き出すなど、Kirinのカムバックに対する期待が高まっていきました。

そして、今年1月頭に、ファーウェイmate50 Proに「Kirin KC10」というSoCが搭載されている写真がリークされたのです。このKC10というSoCは、台湾のTSMCが生産しているのではなく、中国の中芯国際集成電路が製造しています。クアルコム、テキサスインスツルメンツなどの半導体を製造する世界第3位の半導体製造企業です。

トップの半導体製造企業であるサムスンとTSMCは3nmの製造に挑戦をしていますが、その次のグループである中芯やインテルは7nmの製造に挑戦をしています。中芯でも7nmの半導体製造に成功したという報道が流れていますが、中芯からの公式発表はなく、量産にはまだ時間がかかる段階ではないかと見られていました。

それが突然、KC10というSoCを製造してきました。プロセスは14nmですが、FinFET(Fin Field-Effect Transistor)という新しいタイプのトランジスター構造を採用しています。従来のプレーナー型トランジスターに比べて応答速度が速くなるというものです。

このFinFETの14nmプロセスの半導体を二段重ねにすると、7nmと同じ演算ポテンシャルを持たせることができ、その技術でつくられたのがKirin KC10だとされています。

ただし、Kirin KCシリーズは量産向けではなく、あくまでも技術検証用に少量生産をされたものです。そのため、このKC10搭載のスマホが市場に出回ることはありません。このKC10が量産化されることになれば、Kirin 9010と名付けられることになります。

あくまでも検証用SoCが出てきたというだけなので、ここから量産化をして、スマホという製品に組み込んで出荷するまでにはまだまだ長い時間がかかります。しかし、わずか2年前は、国産技術では14nm程度の半導体をつくるのが精一杯だった中国が、すでに7nmや7nm相当の半導体を検証用とは言え、製造していることに、多くの人が驚いています。中国の半導体製造技術が急速に向上していることは間違いありません。今年の間に、「Kirinが戻ってきた」ということが実現できたとすると、中国は半導体製造においても、米国を抜き、台湾や韓国に肩を並べるようになってきます。<中略>

Next: 10分でフル充電が可能になる

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー