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韓国、なぜ反日から日本人ウェルカムに大転換?「ノー・ジャパン」を諦めた経済的な理由=勝又壽良

韓国経済のガンは年功序列賃金制

韓国は、輸出に支えられた経済である。全輸出の25%も占めていた中国に異変が起これば、当面は内需でカバーするほかない。

内需の柱と言えば個人消費(民間最終消費支出)である。その名目個人消費の対GDP比が46.14%(2021年)と5割に達していないのだ。日本は53.83%(同)、米国68.21%(同)である。ついでに、中国を見ると38.37%(同)である。これは、絶望的なほど低い状態に放置されている。総資本形成(インフラ投資・民間住宅投資・民間設備投資)が、経済を牽引する発展途上国型経済であり、「未富先老」を地で行っている形だ。

個人消費の対GDP比の多寡は、その国の活力の原点を見せつけている。米国が7割近い個人消費比率に達しているのは、国内の規制を取り払っている結果であろう。その点で、日本はまだまだ改善の余地がある。労働市場の流動化を促進するべく、年功序列賃金と終身雇用制の徹底した見直しが必要だ。

韓国の場合は、日本以上に遅れている。労組の強い抵抗で年功序列賃金の手直しがまったく手つかずの状況にある。

韓国ユン政権は、こうした異常事態にメスを入れようとしている。年功序列賃金を改めて、職務・成果中心の体系に切り替えるというもの。韓国では初めての試みだ。これによって、労働市場二重構造の改善を目指すとしている。4月に賃金制度の改善企業支援策を発表し、9月には職務・成果中心の賃金体系定着のロードマップを示す計画だ。

韓国大企業で勤続年数30年目の社員は、新入社員に比べて2.87倍の賃金を受け取っている。日本の場合は2.27倍、EU(欧州連合)では1.65倍に過ぎないという。日本は、韓国とEUの中間に位置しているが、出生率引き上げにはEU並みのなだらかな賃金上昇カーブに均すことが必要である。韓国の問題は、日本にも通じる側面があるのだ。

49歳での「早期リタイア」が増加?

韓国企業では、年功賃金制による賃金コストの上昇回避目的で、生産性が劣る中高年労働者を減らそうとしている。その結果、40代後半~50代前半の年齢で、早期退職が日常化している。平均退職年齢が、49歳という「早期リタイア」になっているのだ。

強力な労組のため人員削減が難しい大企業や公企業では、代替案として青壮年の新規採用を減らすので企業組織が老化する事態を招いている。

このように、長い目で見れば企業や労働者の双方に利益にならない年功序列賃金が、労組による既得権益主義の反対で手つかずにきたのだ。

政府委員会は、賃金体系を職務・成果給制へ変えた企業に対し、税制上のインセンティブを与えるという。一方、年功序列賃金を固守する企業には、税制上の不利益を与えることを検討する。企業は、法人税の優遇措置が受けられるかどうかという選択を迫られよう。若者世代は、圧倒的に「生産性に見合った賃金」を要望している。韓国も、ようやくその方向へ動き出すのかどうか。分岐点に来ている。

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