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少子化の原因は「最低でも大卒」という親世代にかかった“呪い”。三流大学に通うのは才能の無駄遣いだ=午堂登紀雄

学校の勉強は脳を鍛える訓練

たまに「こんなこと勉強しても社会ではまったく使わない」「学校で習うことなんて実生活では役に立たない」「だから必死で勉強しても無駄」という人がいますが、こういう人は大きなカン違いをしています。

勉強の中身そのものが直接役に立つのではなく、勉強する過程で脳が鍛えられ、そうやって形成した強靭な頭脳が土台となって役に立つのです。

これは私がよく使う例え話ですが、たとえばどんなスポーツでも、必ず走る練習をします。卓球のような走らないスポーツでも、弓道のように上半身しか使わないように見えるスポーツも、必ず走る練習が組み込まれます。それは、足腰の強さはすべての運動能力の土台だからです。スタミナ、瞬発力、敏捷性、安定性、バランス、姿勢の制御を高い次元で獲得するには、強靭な足腰が必要です。ラケットを振る練習だけ、弓を引く練習だけしても強くはならない。強くなるには、一見意味がないとか役に立たないと思える「走り込む」練習をしないといけない。

学校の勉強もそれに似ていて、論理的な思考力や問題解決の筋道の立て方、知識の応用方法を、勉強を通じて身につけていくわけです。学校を卒業したあとの長い長い人生の中で、必要な知識やスキルをその都度習得して活かし、それまで学んだことを組み合わせて応用し、深く緻密に思考できる高性能な脳をつくることに役立っているのです。

もちろん実社会に出れば学力が高いとか学歴が高いとかは通用しないわけで、一流大卒でも使えない人はいますが、一般的には学力の高さと実力の高さは相関関係にあります。

ちょっと話がそれますが、貧困の連鎖の一因は、一部の親の「勉強なんてクソの役にも立たないんだからやめとけ」みたいな発想かもしれません。

親が勉強を軽視すれば子も軽視し、学校を出ても鍛えられていないスカスカの頭脳のまま。だから応用もきかず問題解決能力も低く、子もまた貧困に陥る、というループはありそうな気がします(むろん、ダメ親を反面教師にしてがんばって成功する人もいますが)。

難しい理論の習得は理性をも鍛える?

ほかにも、例えば医師国家試験・司法試験・公認会計士試験・国家1種試験などの高度に知的かつ倫理的な素養が求められる職業はどれも難関の筆記試験があることからも、ある程度は裏付けられるでしょう(一方、ほとんど誰でも取得できる普通運転免許などは、あおり運転や危険運転をする人なども混じったりする)。

そういう難関試験を突破してきた人たちが、たとえばカッとなって人を刺すとか、ナイフを持ってコンビニ強盗に入るということはほとんど聞かないですよね(あってもレアケースで、強盗傷害事件等の容疑者は無職が多かったり)。

勉学は地道な繰り返しや継続など、怠けたいとか遊びたいという欲求を制御する意志が求められますから、理性すら鍛えるということなのかもしれません(一方、ムラッとして、みたいなエリートによる性犯罪とか、贈収賄や談合といった経済犯罪はときどき聞きますが・苦笑)。

とはいえコンビニ強盗に入るような人は、おそらく勉強が不得意だったのでしょう。

自分の行動の結果が何をもたらすか因果を想像できるほど論理的思考力が育っていないわけですし、今さえ何とかなればいいと思考の時間軸が非常に短い(つまり抽象化思考力が低い)、そのためには犯罪を犯してもいいなどと自己の価値判断基準がゆらぎやすいからです。

中学や高校でも勉強しない人がいたと思いますが、彼ら彼女らはどこか精神的に幼いなと感じた人も少なくないと思います。

これは差別とか上から目線とか選民思想とか優越的な発想などというチープな動機で言っているわけではなく、基礎学力の重要性をいろんな方向から指摘をしたいからです(ちなみに上記のような主張に対し「データはあるのか」などと難癖をつけてくる人は少なくないのですが、そういう人は抽象化思考が苦手で具体の世界しか見えていない。物事を一歩引いて俯瞰し観察し、傾向や共通点を抽出するには抽象化思考が必要です)。

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