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少子化の原因は「最低でも大卒」という親世代にかかった“呪い”。三流大学に通うのは才能の無駄遣いだ=午堂登紀雄

教育という自己投資か、借金という消費か

また、この話は社会人になってから同窓会で聞いたのですが、私の高校時代の同級生は名古屋の私大に進み、でも「こんな無名大学ではまともなところに就職はできない」と入学してすぐ運動部に所属し、先輩のOB枠で引っ張ってもらう計画だったそうです。

大学の運動部はしんどいと思いますが、彼はそれで見事メガバンクに就職が決まり、30年経ったいまもそこに勤めています。

当時、大企業はOB面接やOB推薦が中心で運動部出身は有利だったようです(200万人もいる団塊ジュニア世代でしかも氷河期1期生でしたから、膨大な応募者をさばくにはそれが効率的だったのでしょう)。いずれにしても、彼もやはり強い危機感を持って4年間を過ごしたのだと思います。

でもそれこそ少数派で、三流校の学生は先ほどの「戦略思考力」の低さがボディブローのように効いてきて、多くの人は浅い学生生活しか送れない。だから就職活動では苦戦し、不安定な契約社員や派遣に登録するしかなかったり、奨学金の返済ができないような給与の会社にしか入れない(ことが多いのではないかと想像します)。

それで奨学金悪玉論が幅を利かせてくる。

そもそも奨学金は自分の価値を上げるための「教育投資」のはずが、それを「苦しい借金」に落としめたのは本人ではないか(むろん病気とか家族の問題とかやむを得ない事情の人もいるとは思いますが一般論として)、なのに「格差を作っている!」「制度がおかしい!」などと責任転嫁する。

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奨学金の「おかげ」で大学で学べたんじゃないの?投資である以上、回収しようと努力したんじゃないの?と思いますが、結局は自分の能力をさほど高めることなく4年間を過ごしてきたわけで、それはもはや投資ではなく「欲しいものがあるから借金して買った」というカードローン利用者と同じ発想です。

すると学費は非常にコスパの悪い出費になりうるわけで、「自分はいったい何に資金と時間を投じようとしているのか」をもう少し冷静に考える必要があるように思います。

そしてこれは親も同じく、自分の生活や老後の準備を犠牲にしてまで三流大学の学費を工面することにどれほどの意味があるのかと。当然そうでない人もいるでしょうし、上記は「そうなるリスクが高い」という私の勝手な想像であるものの、ゆえに私は自分の子には、カネがあってもなくても、その程度の大学にはむしろ行かない方がいいと考えています。

大学(学力・学歴)以外の道もある

そもそも本当に優秀なら、返済不要の給付型奨学金を獲得できるはず。

それもできず三流校にしか受からないということは、学業に対して本人のやる気や適性がないからであって、であれば別の分野で自分の能力を磨いたり発揮した方がよかろうと。

この世には学問や学歴が関係ない職業はたくさんあります。たとえば起業に学歴は関係ないし、漫画家・作家・作曲家の学歴を気にして作品を買うかどうか迷うなんて人もいないでしょう。

「いやいや、一般企業に就職するには大卒と高卒では壁があるからFランでもBFでもとりあえず大学は行っておいた方がいい」という考えもあると思います。

しかし、いったん社会に出てしまえばあとは実力勝負です。

新卒時は大企業や一流企業に入れず中小零細企業に就職するしかなかったとしても、実力をつければ中途で一流企業に転職できるなど、いくらでも挽回可能。もちろん逆もしかりで、一流大卒でも仕事ができなければ落ちこぼれる。

新卒でどこにも就職できずフリーター、最初に勤めた会計事務所も1年でクビになったというド底辺の私でも、難関の外資戦略コンサルに行けるぐらいになれたのですから。

というのはまあ私の生存者バイアスだとわかっていますが、当時はほかにも外資コンサルに3社も内定が出たため、社会に出てそれなりに鍛えられたのではないかと思います。

むろん高卒と大卒とで職種や給与水準、昇進条件などを明確に区別をしている企業もあるとは思いますが、そうではない実力主義の会社を選べば関係なくなる。たとえばベンチャーはほぼ実力主義ですし、営業職なども成績に比例するでしょう。

逆にどんなに有名一流大を出ていても、たとえば大手金融機関で営業に配属されて成績が出せずにウツになって辞めた、という話も聞きますから、仕事は高卒か大卒かという学歴の問題より、能力と適性が大きく影響するように思います。

そう考えれば、研究者や教育者を目指すとか、職業選択に直結する医歯薬系や一部の理工系、美大芸大、特定業種業界への就職に強いとか資格取得に強いなどといった特色がある大学を目指すならともかく、そうでない人が大学進学にこだわる合理的な理由は(特に自分の子が社会に出る頃には)なくなっていくといっても過言ではない(いや、もうすでにないかもしれない)。

だからいまの親世代の大学信仰の強さは「呪い」だよなあと感じるわけです。そして、その呪いが少子化を後押しする原因のひとつになっている。

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