ChatGPTは毎日のように話題に上がり、AIの代名詞ともなっています。中国では中国語という言葉の壁もあり、画像を中心にAI研究を進み、言語分野のAIについてはノーマークでした。遅れを取った中国はいかに巻き返しを図るのか?現在の中国の生成AIの最新事情をレポートし、その未来を予想していきます。(『 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 』牧野武文)
※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2023年4月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。
中国はChatGptに負けるのか?
みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。
今回は、中国の生成AIの現状をご紹介します。
ChatGPTの話題が連日、メディアを賑わしていることは説明するまでもありません。これまで米国と中国が競い合ってきたAI開発競争は、米国が一歩リードしたかのように見えてきます。
しかも、明らかに慌てて3月16日に「文心一言」を発表した百度は、当日、デモのようなものを行わず、ロビン・リーCEOも消極的な発言をしたことから、OpenAIにかなりの水を開けられてしまったのではないかと感じた人が多かったようです。百度の株価も一時的に下落したことが大きく報道されました。
しかし、その下落はほんとうに一時的で、日足ベースで見ると、むしろ上昇基調で、ここ1年以内の最高値である160ドル近辺に達するほど上昇しました。百度が自動運転領域や顔認証、画像解析のAI開発が進んでいることは広く知られていますが、投資家は、大規模言語モデルである文心一言にも期待を持ったようです。
では、ChatGPTと比較して、中国のLLM=大規模言語モデルはどのくらいの実力なのでしょうか。厳密な比較は不可能にしても、できる限り、比較をしてみたいと思います。
中国のAI最新事情はどうなっている?
今回は、中国のAIGCの現状についてご紹介します。
AIGCとはAI Generated Contentsの略で、AIが生成するコンテンツのことです。また、このようなAIはGenerative AI(生成AI)と呼ばれます。今、大きな話題になっているChatGPT(テキストを生成)やMidJourney(画像を生成)などが代表的なものです。
日本でもChatGPTのことは毎日のようにニュースになっていますが、中国でもまったく同じで、連日AIGC関連のニュースが飛び交い、投資家たちは中国の生成AI企業を探しまくっています。ある投資家は、「今、生成AIに投資をしない投資家は投資家とは言えない」とまで言っているほどです。
今、中国のAIGCがどのような状況になっているか、みなさんも知りたいことでしょうし、私も知りたいところです。
いつも励ましのメールとともにご質問をいただいている読者の方から、次のようなご質問をいただきました。いつもいつもありがとうございます。
Chat-GPT4が話題ですが、百度でも文心一言を発表し、今後もAI関連の開発は激化しそうな様相です。一部の中国人から「文心一言」は、他AIサービスを流用してるとの批判もあるようですが(以下リンクは一例です)、米中それぞれのAIの実力および開発状況について、概況を解説していただけますでしょうか。どうぞよろしくお願いいたします。
今回は、趣向を変えて、このご質問に答えながら、中国の生成AIの現状についてご紹介していきたいと思います。
ただ、次のことにご注意ください。ChatGPTもそうですが、中国の生成AIも目まぐるしく状況が変わっていっている最中です。そのため、なかなか体系的に俯瞰をするようなことができません。また、今回書いたことが明日には誤りになってしまう可能性もあります。
例えば、ご質問に関連することなのですが、「文心一言」に付属している画像生成機能には大きな問題があり、ここしばらくはネット民のおもちゃになっていました。「こんなアホな画像が生成された」という楽しみ方をされています。しかし、この画像生成の欠点が、実は文心一言のモデルを推測する大きな手掛かりになってるため、後ほどご紹介します。
しかし、このメルマガを書き始めてからなのですが、ある人が「画像生成機能が格段によくなった」ということを教えてくれました。実際、MidJounery並みとまではいきませんが、十分に実用に耐えるレベルになりました。大幅なアップデートがあったようです。
このように刻々と状況は変わっていきます。
また、後ほど今わかっている状況の整理はしますが、それも刻々と状況が変わっていきます。あくまでも現時点での状況という前提でお読みください。
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