Google検索からChatGPTへ移行するのは時間の問題
「ChatGPTでシンギュラリティなど起こらない。なぜなら、AIは言葉の意味を理解できないから、人間を超えることはできない」「ChatGPTのブームももうすぐ沈静化します」
とおっしゃっています。一応、番組名や評論家名は伏せますが、大きな勘違いをされていると思います(多分、評論家というのは他の人と違った意見を言わないと仕事にならないということが大きいのだと思います)。
LLMの基本的な仕組みは、GPTでも文心でもその他のものでもほぼ同じです。ある単語が与えられたら、次にくる単語を予測すると言う仕組みです。例えば、「明日の天気は」ときたら、次にくる単語は「晴れ」「曇り」「雨」の確率が高く、「美味しい」「楽しい」と言う単語がくる確率はきわめて低いはずです。
このようなシンプルな仕組みであるため、でたらめなことを聞いても、もっともらしい回答をしてしまいます、学習に使った教師データが誤っていれば誤った情報を出力してしまいます。
しかし、今ではChatGPTだけでなく、多くのLLMが強化学習を取り入れるのがトレンドになっています。ChatGPTと会話をしていて、「それ間違っているよ」と利用者から教えられると、ChatGPTは素直に「大変申し訳ありませんでした。間違った情報をお伝えしてしまいました」と謝罪をしてきて、パラメーターを修正していきます。どんどん正しいと思われる回答に近寄っていく仕組みになっています。
ですので、時間はかかるかもしれませんし、再びこの課題に対してイノベーションが起きて、一気に修正されるかもしれませんが、少なくとも今より正確さはあがっていく一方です。
しかも、私たちが知りたいことは、川崎密室放屁事件などという架空のことではなく、「連休中でも混雑しないリゾート」であったり「安くて美味しいイタリア料理屋」など現実のことがほとんどです。もっともらしいことさえ回答してくれれば、それを踏み台にして自分で調べていくことができます。
すでに私自身、何かを調べるとき、以前は「ググって片っ端から読んでいく」という野蛮なやり方をしていましたが、現在ではChatGPTに聞いて、そこから深掘りをしていくというやり方に変わってしまいました。特に、自分がまったく知識を持っていない分野のことを調べる時にChatGPTを使うと、全体の骨格が先に見えている分、効率よく調べることができるのです。
【中略】
生成AIで最終的に勝つのは中国か?
いくつの生成AIを開発したかのランキングをを見ると、やっぱり圧倒的なのはGoogleです。OpenAIとマイクロソフトがタッグを組んだOffice365のCopilotなどは非常にうまく、しかもホワイトカラーの働き方を大きく変えそうなプロダクトですが、このようなサービスを次々と開発できる力を持っているのはやはりGoogleということになりそうです。
中国の状況は面白く、北京知源人工知能研究院(BAAI)と清華大学という研究機関系がリードをしているというのが特徴です。BAAIは主要大学、主要テック企業が共同で設立した戦略的研究開発機関です。その下に、百度とアリババというテック企業がいるという状況になっています。サービスに結びつける力を持っているのは、研究機関ではなく、このようなテック企業であるため、中国の場合は、研究機関とテック企業がどれだけ協働できるかどうかが鍵になります。
中国では、すでに各分野での生成AIは無数に開発されています。
Leonis Capitalがまとめた中国生成AIの産業地図によると、中国はLLMでは米国に遅れをとったが、各生成AIのビジネス化、サービス化では進んでいる。このような生成AIがLLMを中心に統合をすることで中国は米国に対抗することができます。
このような各AIモデルを統合し、人間とのインタフェースになるのがLLMの役目になります。このような生成AI同士の協働は、米国よりも中国の方が早く進む可能性もあります。ただし、中国語ベースになるため、中国の中だけで普及をし、海外に影響を与えることはほとんどないと思われます。ここでも米中のデカップリングが進むことになり──
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- vol.119:主要テック企業はリストラの冬。安定成長へのシフトと香港上場問題(4/11)
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知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード
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』(2023年4月10日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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