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米政府は金融危機を起こしたい?今回こそ本当にヤバい「債務上限引き上げ問題」と日本を襲う余波=高島康司

今回は何が起こるのか?

それでは、今回の問題が紛糾した場合、どんなことが起こるのだろうか?

もちろん、妥協が成立し債務上限の引き上げが実現する可能性は十分にある。しかし今回は、銀行危機の連鎖と商業用不動産の破綻、そして脱ドル化の加速という条件の元で起こるので、最終的に妥協が成立したとしても、問題が紛糾しただけで影響力はかなり大きくなるはずだ。

どのような影響が出るのか、以下に簡単にまとめた。

<(1)国債の下落による金利の上昇>

ドルは、唯一の国際決済通貨ではなくなりつつある。そうした状況でデフォルトする可能性が高まると、ドルと米国債の信任は揺らぎ、ドル安と米国債の下落が起こる。その結果、金利は上昇することになる。

<(2)中小の銀行経営の悪化と破綻の連鎖>

金利の上昇は多方面に深刻な影響を与える。「シリコンバレー銀行」、「シグナチャー銀行」、「ファースト・リパブリック銀行」が破綻した理由のひとつは、資産の多くを米国債で運用していたことにある。「FRB」の金利上昇で国債が下落し、含み損が出たところに資金繰りが悪化した預金者が預金を引き出した結果、経営状態が悪化した。それがSNSでウワサとなり、預金の引き出しラッシュになったのだ。

破綻した3行と同じような財務体質を持ち、経営状態がよくない銀行は多い。もしこのような状況で債務上限引き上げ問題が紛糾し、金利がさらに上昇すると、同じような取り付け騒ぎから銀行破綻の連鎖が起こるかもしれない。

<(3)信用収縮>

銀行破綻が連鎖する前に、金利の上昇から経営状態が悪化した銀行は、信用の供与を収縮させる可能性が高い。貸し渋りである。この信用収縮が原因となり、ただでさえ厳しい状況にある商業用不動産の企業破綻が相次ぐ。特にアメリカの中小の銀行の借り手は不動産会社が多い。その破綻は不良債権となり、これが銀行の信用をさらに収縮させる結果になる。

<(4)税の還付金の支払い停止>

日本もそうだが、アメリカの中小企業も収めた税の還付金を事業資金に組み入れて操業しているところが非常に多い。債務上限の引き上げに紛糾する期間が長くなったり、またデフォルトするようなことがあれば、連邦政府の予算の枯渇から、還付金の支払いができなくなる。すると、銀行も信用の供与を収縮させているので、資金繰りに困って破綻する企業が一気に増大する。

他にもまだまだあるが、これらが2023年の債務上限引き上げ問題が引き起こす特徴的な問題である。経済学者の中には、政府が本当にデフォルトに陥った場合、大量の解雇が行われると警告している人もいる。またホワイトハウスは、デフォルトが長引いた場合、800万人以上の雇用が一掃されると見積もっている。

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