fbpx

ホンダ「利益50%超の株主還元」宣言は買い?二輪シェア世界首位も、四輪の“負け戦”を長期投資家はどう判断すべきか=栫井駿介

EV化戦略は勝ち目無し

そこでホンダはEV(電気自動車)に舵を切ろうとしています。
今まで自動車で利益が出ていなかったのは、いろんな種類の自動車を作ったものの多くは売れず、コストがかさんでいたからで、今度は車種を絞ってコストを減らし、かつ世の中の潮流に乗ろうと、やがては全てを電気自動車にしようとしています。

ガソリン車も残そうとしているトヨタの戦略とは一線を画しますが、この戦略は厳しいのではないかと私は考えています。
たしかに世の中の要請もあってEV化というのも分からなくはないですが、電気自動車はガソリン車と比べて参入障壁が低く、競争が激しくなると思われるからです。
その中でホンダに優位性があるかというと疑問です。例えば中国のBYDは元々電池を作っていた会社なので、電気自動車にその電池の技術を活かせるということで優位性があります。
ホンダにはそういった強みがありません。

E3839BE383B3E383806.png

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)分析では、電気自動車は、市場占有率は低く、一方で成長率は高いと思われるので「問題児」(どうなるか分からない)の位置かと思われます。

しかし、電気自動車というものは、仮にガソリン車が電気自動車に置き換わったとしても、自動車の販売台数が増えるわけではないので、実は市場成長率もそれほど高くはなく、「負け犬」に近い位置にあるとも考えられます。

ホンダがその電気自動車にベットして成長を目指すのはいかがなものかと思います。

「今後も配当を出し続けるような余裕はない」

割安を解消する手段として、1つは還元を強化して株主からの期待を高めるというものがあります。

もう1つは資本効率を高めるというものです。稼いだお金をもっと稼げるところに投資するということですが、今ホンダがやっていることは、二輪事業で稼いだお金をどんどん“負け犬”事業の電気自動車に投資するという、ある意味やってはならないことをやっている状況です。
電気自動車の開発にもコストはかかりますし、そこでシェアを取れるとも限りません。
勝ち目のない戦いを続けていて、これではPBR1倍割れの解消は難しいと思います。

還元を強化しても、株価の上昇は一時的であると私は見ています。

戦略の基本として、勝てるところに集中して投資するか、それができないのなら株主に利益を還元するのどちらかかと思いますが、ホンダはどちらも中途半端になっています。

今期の営業利益は1兆円と過去最高を見込んでいると言っていますが、それを達成できるかも疑問です。

E3839BE383B3E383807.png

業績の見通しでは、販売影響で+4,406億円と、販売台数が増えたり利益の出る車が売れてこれだけ増益となるとしてありますが、これはかなり甘い見通しではないかと思います。
これまで売上台数を減らしてきたのは確かに半導体不足などの影響もあったと思いますが、それが解消したとしてもこれほど伸びるかと言われると疑問です。
配当性向30%を掲げていますが、思ったより利益が出なければ配当も減ることになるので、1株150円という配当も実現できるかは不確かです。
少なくとも今後配当を出し続けるような余裕はないといったところです。

Next: ホンダは買い?長期投資家はどう判断すべきか

1 2 3
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー